初陣2勝、政権に弾み 衆院補選
2006年10月23日07時40分
「2勝は至上命題」というハードルを突きつけられた安倍首相。22日投開票の衆院神奈川16区、大阪9区両補選を完勝で乗り切り、与党幹部は「これで安定した政権運営ができる」。一方、民主党は小沢代表の責任論はひとまず封印するが、地道に票を掘り起こす「小沢流」の限界も見え始めた。参院選に向け、今後も負けが続くと「小沢神話」が崩れ、求心力が急速に低下する可能性もある。
■強気の国会運営へ
「安倍政権のアジア外交の改善や教育問題への取り組みなど、この1カ月の動きが選挙民に支持された」。首相と同じく初陣を飾った公明党の太田代表は22日夜、満足そうに語った。
首相は就任後、国会で歴史認識で攻め込まれるとみるや、アジアへの侵略を謝罪した村山談話などに否定的な持論を封印。告示直前の週末には中韓両国を歴訪し、そこへ北朝鮮の核実験が重なった。周到な準備に追い風も加わり、2勝が「政権の信任」(自民党三役の一人)というハードルになっていた。
自民党本部で記者会見した谷津義男選対総局長は「核実験にしっかりと対応したことが、有権者に評価された」と胸を張った。首相周辺も「中韓首脳との会談実現が大きい」と振り返る。
もともと自民党の議席だったとはいえ、2勝が与党の強気の国会運営を後押しすることは間違いない。自民党幹部は「これまでの安全運転が多少変わってくるだろう」。
この国会での勝負どころと見なしてきた教育基本法改正案についても「これで野党も審議に応じざるを得ないだろう」(自民党幹部)との見方が広がる。さらに、「防衛省」昇格法案のほか、与党内であきらめムードも漂っていた「共謀罪」法案すら、成立をめざす声が出始めた。
自民党では、郵政民営化法案に反対して離党した議員らの復党問題も動き出す。有権者からの反発を懸念し、補選前には具体的な動きを控えていたものだ。補選勝利の勢いもかって、多少の批判を受けても早期に参院選に向けた態勢を整えた方が得策との声が高まる可能性がある。
これまで早期復党に慎重な姿勢を崩していなかった中川秀直幹事長は、22日夜の記者会見で「党利党略との批判を受けないようにやっていくことが、参院選の勝利のために必要だ」と改めて持論を唱えた。ただ、これまでにない言葉を付け加えた。「通すべき筋道をしっかり解決しながら、党全体でしっかり協議して臨んでいきたい」
■「小沢流」選挙に限界も
「まだまだ民主党として力も不十分だった」。民主党の菅直人代表代行は22日夜、神奈川県厚木市内の後藤祐一氏の事務所で敗戦の弁を述べると取材は受け付けず、外に姿を消した。小沢氏はこの日、別の選挙の応援で北海道に入り、夜に東京に戻ったが、党本部に姿は現さなかった。
「2敗でも大きな影響はない」と党幹部は早くから予防線を張ってきたが、惨敗に衝撃は隠せない。「選挙に強い」ことが小沢氏の求心力の源泉だからだ。自民党幹部は22日、「小沢神話が崩れた」と得意げに語った。
不利な状況はそろっていた。両選挙区とも自民党の議席だったうえ、新首相誕生の「ご祝儀」と北朝鮮問題が加わった。ただ、それを差し引いても攻め手を欠いた。
民主党は、北朝鮮問題について「政府との違いを際立たせるつもりはない」と積極的には取り上げなかった。唯一、中川昭一自民党政調会長や麻生外相の核保有議論をめぐる発言を批判したが、流れを変えられない。「(核保有発言に)世論や報道が反応しなくなっている」。小沢氏は18日、こうぼやいた。
代わりに格差や社会保障などに重点を置いたが、鳩山由紀夫幹事長は22日、「十分な争点にならなかった。医療問題や障害で苦しむ方々の課題に対し前半は功を奏したが、核実験以降、力不足だった」と悔しさをにじませた。
ほころびの芽も見え始めた。核実験を受け、小沢、菅、鳩山3氏は「周辺事態ではない」と結論づけたが、渡辺秀央元郵政相や前原誠司前代表ら15人が19日に会合を開き、「周辺事態にあたる」との異論が出た。
今回の補選は小沢氏のもと、菅氏が神奈川、鳩山氏が大阪の責任者として任された。補選惨敗が、3氏の「トロイカ」態勢による党運営に対し、党内から不満が出るきっかけになる可能性もある。
鳩山氏は22日夜、こう語った。「それぞれ勝てなかった責任はあるし、代表の責任も当然ある。ただ、一致団結して戦いの基盤を作り直していく。次に備えることが大事で、そのために責任を果たすことが重要だ」
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