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年末年始特集

除夜の鐘、自動鐘つき機で「ゴ〜ン」? 後継難で急増

2007年12月26日

 無人で鐘を突く機械式の撞木(しゅもく)を採り入れる寺院が増え、今や全国約1600カ所に広がっている。住職が高齢化したり、過疎化で後継者がいなくなったりする突き手不足の中、地域の鐘の音を守りたい住民らの願いがのぞく。タイマーで動く撞木を唯一、製造しているのは奈良市の上田技研産業。日本人の「心のふるさと」を消すまいと、除夜の鐘を控えた年の瀬、駆け込み需要に追われる日々だ。

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自動で鐘をつく撞木を見上げる檀家総代の辻本勝敏さん(左)ら=奈良県五條市の西光寺で

 奈良・吉野の山あいにたたずむ五條市西吉野町西日裏地区の西光寺。正午、「チリチリチリ」とかすかな機械音が聞こえた次の瞬間、鐘楼から鎖でつるされた撞木がひとりでに前へ振り出された。ゴーン……。

 「ええ音やろ」。地元自治会長で檀家(だんか)総代の辻本勝敏(まさとし)さん(82)が胸を張る。地区は主要産業だった林業が衰退して過疎と高齢化が進み、60戸ほどあった集落は3分の1に減少。17世紀建立の同寺は15年ほど前、住職がいない無住になった。

 かつては午前6時と正午、日没時に鐘をついていた。「檀家だけでは朝早い鐘はようつかん。鐘楼に登る階段も急で、年寄りには難儀」と、金を出し合って、仏壇店で教えてもらった鐘つき機を96年に取り付けた。「子どもの頃からずっと聞いてきた鐘の音。途切れさせては、もっと寂しい地域になってしまう」

 電機部品メーカーだった上田技研の上田全宏社長(63)が、鐘つき機を開発したのは80年ごろ。近所の寺が人手不足になったと聞いたのがきっかけだった。

 タイマーで設定した時刻になると、鐘楼の天井から下りてきた金属棒の先端が斜め上から撞木を押さえつけるように固定。その直後、撞木内部からかぎ状の部品が出てきて金属棒に装着され、バネ仕掛けで後方にはね上がる。その反動で撞木が前へ突き出される仕組みだ。1セット60万〜100万円。電気が通っていない場所でも作動するよう、太陽電池による充電式タイプもある。

 ただ突けばいいというわけではない。撞木の先端部に皮を張り、ネジの締め具合も微妙に変えて、その寺独特の音色を作り出す。発売から約25年。「コスモス寺」として知られる般若寺(奈良市)など奈良県内で19寺が採用しているほか、兵庫県内の61寺、大阪府内の25寺など、北海道から沖縄まで約1600寺で自動の鐘が鳴る。

 兵庫県豊岡市にあるボタンの名所、隆国寺も11月に導入した。参拝者の対応で忙しく、住職1人で毎日3回の鐘つきに手が回らなくなった。今は午前9時から午後6時まで30分間隔で鐘の音を響かせる。大田大法(だいほう)住職は「鐘の音は仏様の声。すべての参拝者に聞いてもらえるようになった」。

 今月、従業員7人の同社は山形から東京、大分まで8都府県9寺の取り付けに奔走。これまで除夜の鐘だけは人手を確保してきたが、ついに断念した寺もあった。上田社長は「鐘の音は日本人の郷愁を呼び起こす。それを守っていく使命感を持ち続けたい」と話す。

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