現在位置:asahi.com>ニュース特集>地球環境> 記事 南極観測50周年―立松・毛利・今井3氏、視察終え語る2007年01月28日09時56分 南極観測50周年記念で、日本科学未来館館長の毛利衛さん(58)、登山家の今井通子さん(64)、作家の立松和平さん(59)が、国立極地研究所の招待で7日から16日まで、南極の昭和基地など観測の最前線を視察してきた。3人が思い描く南極の将来像をそれぞれ語ってもらった。同基地は1957年1月29日に開設された。(中山由美)
■現代人も学ぶことある―作家・立松和平さん ここまで「地球」を意識した旅はなかった。南極に初めて立った時、青氷の上に大きな岩が転がる光景に驚いた。氷河が谷を刻み、山を越えて運んだものだ。人間がかなわぬ圧倒的な力の差が目の前にある。数万、数十億年……ぼくらが持つ時の流れとはるかに違う裸の地球が見えた。結局のところ万物は流転する。 湖をのぞけばコケが生えている。どんな所でも生きられる場所を探す姿に「生命の星で暮らしているんだ」と、地球に対する尊厳を強く感じた。 海に浮かぶ氷山は山水の庭に、雪原は砂漠に見えた。「抽象性」を感じさせる風景の中、わき起こる思いに、詩を書いてしまった。都会では欲望を介してしか物事を見られないが、南極はそんなものを拒絶し、ただ生きる力を試される。 これからは芸術家が行くのもよいのでは。ぼくは南極探検家の白瀬矗(のぶ)を小説で書きたくなった。「胆力」を失ってしまった現代人が学ぶことがきっとある。強い意志の力があったあの原点を忘れてはいけない。隊員たちは極寒の地でがんばっている。その根底には今も冒険心や探究心がある。
■地球圏研究の最前線に―日本科学未来館館長・毛利衛さん 地道な観測を続けてきた成果は評価するが、定常観測に比べ研究観測が少ないと感じた。定点観測はロボットに任せればいい。遠隔操作やデータ通信もできる時代に、わざわざ南極に行って越冬するなら、もっと最先端の研究に金も労力も注ぐべきだ。惰性で観測を続けるだけでは理解されないし、データを集めれば論文を書けるという発想ではいけない。隊員は皆で土木や輸送、様々な作業をしてチームワークは優れているが、同時に研究者は研究に専念できる時間ももっと必要だ。 先駆的実験ができる南極を「地球圏研究最前線基地」とすることを私は提案したい。50周年の節目、船が代替わりする今が将来像を描く好機だ。 地球環境をとらえる研究観測で、日本は世界のリーダーシップをとるべきだ。有人宇宙では無理だが、歴史のある南極と海洋の研究ならできる。約100年前に白瀬矗(のぶ)がアムンゼン、スコットと南極点初到達を競い、59年の南極条約原署名12カ国の1国なのだから。 視点の違う社会科学者や人文科学者も加えて、客観的評価や検証を徹底して行うことが必要だ。
■国民一体で「応援団」を―登山家・今井通子さん 50年前に比べて、国民の関心が薄いといわれるのは、日本全体が自然科学離れしているせいだと感じる。日本隊がオゾンホールを発見したことも知られていないし、今も世界のリーダーシップをとれる研究をしているのにアピールが足りない。 「若者よ、南極を目指せ」と言いたい。隊員と話してみて、理解し合い、思いやる気持ちを感じた。自然の厳しさの中では大都会やパソコンの前でできない人格が形成される。「がんばれば南極に行ける」と目標にして勉強や仕事に打ち込めるようになればと思う。 知的好奇心にあふれた高齢者向けには、「学ぶ」視点にたったエコツアーを考えてみては。山歩きなどで自然に親しむ中から、新たなものを学びとっている人は多い。 今回は航空機で半月で南極を往復した。自国の飛行機が使えたらいいのに。船だけでなく航空自衛隊も輸送に参加して、平和貢献してほしい。企業は南極の環境を利用し、新製品開発に役立てたらどうだろう。 国民が一つになって「南極地域観測応援団」を再び作りたい。 PR情報地球環境
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