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世界自然遺産候補の小笠原、3年かけ外来種の駆除進める

2007年01月30日16時22分

 本州から遠く離れた太平洋上で固有の生物種を育んできた小笠原諸島(東京都小笠原村=父島、母島など三十余島)が29日、世界自然遺産の候補地に正式に決まった。問題は、人とともに持ち込まれ、生態系を脅かしている外来種の存在。環境省などは遺産登録に向け、今後3年という異例の長さの準備期間を設けて駆除を進め、生態系の保全に挑む。

写真グリーンアノールをとらえる粘着式のわなを仕掛ける=29日、小笠原・父島で 
イラスト世界自然遺産 国内の主な外来種
写真船着き場などがあり、外来種対策の重点地域となっている市街地。近隣の無人島への拡散を防げるかどうかは、ここでの根絶にかかっている=29日、父島で 

 本土からの唯一の交通手段である船に揺られて26時間。玄関口の父島・二見港の周辺では、ゴキブリ捕りに似た箱が木々に取り付けられているのが見える。全長15センチほどの米国原産のトカゲ、グリーンアノールを駆除する粘着式のわなだ。

 「最近はセミの声がすっかり聞こえなくなった」。自然に魅せられて70年に移住した旅行会社オーナー、田中則和さん(63)は嘆く。アノールは計2400人ほどが住む父島・母島に600万匹もいると言われ、小笠原固有の昆虫類を猛烈な勢いで食べている。

 世界遺産登録に向け、20日から、ボランティア約30人によるアノール駆除が始まった。田中さんは、経営する民宿の周囲にわなを仕掛けた。「自分たちで減らしていけば、いつか父島にも昆虫が戻ってくるかもしれない」

 事前調査をした戸田光彦・自然環境研究センター主席研究員は「アノールは民家の敷地にもたくさん入り込んでおり、住民の協力は欠かせない」と話す。他の無人島に飛び火しないように、船の発着地を中心に、まず3千匹を捕る計画だ。

 「自然遺産としての価値は十分にあるが、外来種対策が遅れている」。昨年6月、遺産審査を担当する国際自然保護連合(IUCN)のレス・モロイ氏が現地を視察し、そんな見解を示した。

 これまで3カ所の自然遺産登録の際は、今回のような暫定リストへの掲載を省略するか、暫定リストから間をおかずに本推薦をした。しかし今回は本推薦を遅らせ、外来種対策に時間をかける。

 29日、暫定リスト入りを役場で聞いた森下一男村長は「『自然との共生』は68年の返還当時からの方針。住民の意識を今まで以上に高め、登録を目指したい」と語った。

 「3年間の外来種対策で、目に見える成果をしっかり出しましょう」

 29日、外務省で開かれた世界遺産条約の関係省庁連絡会議で、環境省の担当者が呼びかけた。

 小笠原の島々は、かつて一度も大陸と地続きになったことがない。広い海に隔てられ、島の生き物は独自の進化をとげ、世界でここにしか生息しない固有種が多い。

 東北大の千葉聡・助教授によると、もともと小笠原にいるカタツムリ95種のうち88種が、他では見られない固有種。しかし父島では、これらのカタツムリが、ヒルのような姿の外来種プラナリアに食べられて激減した。

 東京都と村は、プラナリアが泥に交じって他の島に広がらないように、乗客の靴ふきマットを船着き場に設置した。

 野生化したヤギやネコ、クマネズミなども、固有の生物を脅かしている。まきなどに利用するために植えられた外来樹アカギは、在来種の木々を押しやりながら急速に拡大。母島の14%まで占めるようになったという試算もある。

 環境省などは11の外来動植物に分類して対策を決定。防除手法の確立と成功事例の積み上げを目指す。だが、めざす「根絶」は容易ではない。ある研究者は「登録が先か絶滅が先か、時間との闘いだ」と話す。

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