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コーヒー1杯分の挑戦 脱温暖化社会へ 変わるアメリカ・3

2007年04月21日20時29分

 ロッキー山脈をのぞむコロラド州ボルダー。標高約1650メートル、人口9万人ほどのこの地方都市は「マラソンランナーの聖地」として知られる。五輪で2度のメダルをとった有森裕子さんが暮らし、シドニー五輪優勝の高橋尚子さんらもここでトレーニングを積んだ。

写真自然環境に恵まれたボルダー。市街地のそばで野生の鹿も見られる=コロラド州で、加藤丈朗撮影

 周囲に広がる大自然を守ってきたのは市民だ。1967年、市は全米でも例のない「環境保全のための消費税」を導入。その税収で市が土地を買い上げ、大自然を守るシステムを築いた。

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 それから40年。ボルダーは再び時代の表舞台に登場した。4月1日、市は二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて全市民に税金を課す炭素税を全米で初めて採り入れた。この税収で、今度はCO2の排出削減に挑む。

 「ボルダー市民は環境保護に強い倫理観を持っている。連邦政府が何もしないのなら、われわれが草の根的な手法で地球温暖化に対処する必要がある」。マーク・ラザン市長は強調する。

 事実、炭素税導入の可否をめぐる昨年11月の住民投票は賛成60%、反対40%と差がついた。

 目標は、2012年までにCO2排出量を90年の水準から7%減らすこと。京都議定書で米国が国際公約しながらブッシュ政権が放棄したこの目標値を、市は独自に達成しようというのだ。

 課税対象は電力消費。ボルダーでは、CO2の51%が発電に伴って排出されているためだ。

 電力消費1キロワット時あたり一般家庭は0・22セント、商店などの一般事業者は0・04セント、工場などは0・02セントを払う。一般家庭の負担は月平均1・3ドル。税収総額は12年までに計約670万ドル(約8億円)になるという。

 市環境局のジョナサン・コーエン局長は「税金を払うことで、市民や事業者は自分たちが環境汚染にどれだけ直接かかわっているか理解できる。市はその税金で、まず住宅やビルの省エネ化を支援する計画だ」と話す。

 しかし、地方の小都市とはいえ、削減は簡単ではない。CO2排出量は90年より20%以上も増えている。あと5年で現状から24%も減らさないと7%削減には届かない。

 市商工会議所のダン・パワーズ地域対策部長は「事業者はビルに店子として入居している例が多く、省エネを考えても難しいことがある。実際に何ができるか、市と詰めないといけない」と、課題も指摘する。

 コロラド州は04年、電力業界に再生可能エネルギーの利用割合を15年には10%に増やすよう義務づけた。市は利用を後押しするため、再生可能エネルギーからの電気を使えば炭素税を減税する。

 自動車からの排出を減らそうと公共交通機関のあり方も見直し、あの手この手で目標に挑む。

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 ボルダーにある米国立大気研究センター。温暖化と社会変革のあり方が専門のスージー・モザー博士は「小さな市でも京都議定書の目標を達成できる。それを示すことが最も重要だ。月にコーヒー1杯分の税金を払うだけで、パイオニアになれる」と評価する。

 ワシントン州シアトルのグレッグ・ニッケルズ市長は05年、京都議定書の目標を達成するため、全米市長会のメンバーに「気候保護協定」への参加を呼びかけた。

 協定は「温室効果ガスの排出削減スケジュールと排出上限とを明確に定めた法律を定めるよう連邦議会に迫る」とし、各市にも「地域での達成努力」を求めている。

 市長会の約1200人のメンバーのうち、すでに450人以上がこの協定に署名した。温暖化対策は、市レベルで一気に広がる兆しを見せている。(ワシントン・上田俊英)

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