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国益のため前向き変化 脱温暖化社会へ 変わるアメリカ・5

2007年04月21日20時30分

 ゴア元副大統領が温暖化の危機を訴える映画「不都合な真実」は、米国市民の温暖化への関心を高めたといわれる。3月21日、ゴア氏は議会で証言に立った。

写真米国は、豊かな資源を使う「石油づけ社会」と言われてきた。メキシコ湾岸での採掘に使われたやぐら。現在は博物館として見学できる=米テキサス州ガルベストンのオーシャン・スター号で、加藤丈朗撮影

 「私自身は京都議定書を批准すべきだと思うが、国内で悪い評判にとりつかれている事情も理解している。我々には新しい国際条約が必要だ」

 議定書に理解の深いゴア氏でさえ、米国は議定書に戻れないという。それほど評判が悪い。

 米国は97年の京都会議で、議定書に「排出量取引の導入」と「途上国が将来の排出抑制を約束すること」を盛り込むよう求めた。しかし、途上国の反対で後者は入らなかった。

 当時のクリントン・ゴア政権は「仕方がない」と妥協して採択したが、共和党が多数だった議会は批准を拒み、ブッシュ大統領は01年3月、議定書から離脱した。中国やインドなどの途上国には温室効果ガスの削減義務がなく、米国の産業の競争力がそがれることが理由だった。

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 その米国に、前向きな動きが出てきた。ただ、「京都への復帰」を志向するものではない。

 温室効果ガスの排出は90年比で15・8%増(04年)。議会には「2050年には90年レベルの60%削減」(リーバーマン・マケイン法案)、「50年に80%削減」(サンダース・ボクサー法案)といった大胆な長期削減の法案がいくつも出ている。これらもしばらくは排出が増え、のちに下降するシナリオだ。

 うまくいっても、京都議定書には関係のないテンポで削減をめざすことになりそうだ。

 環境NGO「チェサピーク気候行動ネットワーク」のジョシュア・タルキンさんは「まずカリフォルニア州が車の二酸化炭素を規制し、約10州が追随する。北東部10州が排出量取引『RGGI』を始める。そして連邦政府が動く」と期待する。

 全米規模の排出量取引を備えた連邦法ができるとすれば、「09〜10年ごろ」とささやかれる。08年の大統領選挙では、党を問わず、だれが勝ってもブッシュ政権よりは前向きの温暖化対策をとるという見方が強い。

 いま動く背景には何があるのか。対策に積極的な企業と環境NGOが作るUSCAP(米国気候行動パートナーシップ)は1月の提言で、「国際交渉に参加してすべての主要排出国と約束を交わし、米国の国益を守る」ことを求めた。

 単に倫理的に排出削減を求めるのではなく、「温室効果ガスを抑えた世界でも米国は成長する」「気候変動の問題は米国経済にリスクよりも経済的機会をもたらす」と強調する。

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 ワシントンのシンクタンク「ピューセンター」のマニク・ロイさんは京都議定書後の13年以降について、「今の国ごとの排出量の制限だけでなく、産業分野ごとの生産原単位での比較など柔軟な枠組みが追求されるだろう」とみる。

 温暖化防止の国際協定は、巨大な省エネ市場の獲得競争の条件を設定するものにもなる。米国が交渉に復帰する場合は、自らが主導権を握る形をとると見る人は多い。

 米国社会の変化は、そうした将来の国際競争に向けた助走といえる。

 しかし、大量の石油と石炭に恵まれ、安いエネルギーの大量消費で高い生活レベルを築いてきた米国が、企業活動や生活スタイルを大きく転換できるのか。まだわからない。(編集委員・竹内敬二)=おわり

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