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州や企業が排出量取引 脱温暖化社会へ 変わるアメリカ・1

2007年04月21日20時28分

「米国社会は劇的に変わりつつある。国民にも議会にも、気候変動は現実のものだというコンセンサスがある」

写真米国では発電燃料の半分が石炭。温かい排水口近くに、人魚のモデルともいわれるマナティーが集まることで有名なビッグ・ベンド発電所=米フロリダ州アポロビーチで、加藤丈朗撮影
写真主要国の温室効果ガス排出量の変化

 米下院でエネルギー・大気環境小委員長を務めるリック・バウチャー議員(民主)が11日、東京都内で講演した。

 ブッシュ政権が01年に京都議定書からの離脱を宣言したあと、米国は「温暖化に後ろ向き」といわれ続けてきた。バウチャー氏が強調したのは、その「変化の始まり」だった。

 背景を二つあげた。まず温暖化の科学。人間活動が原因とはっきりしたこと。もう一つは、昨年11月の中間選挙で民主党が多数をとったことだ。

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 議会には、いま温暖化対策の法案と草案が7本もでている。その一つを提案したビンガマン上院議員(民主)の政策スタッフは「これまでも州や産業界、議会に積極対策の考えはあったが、共和党主導の議会という巨大な帽子が押さえていた。帽子が消え、たまっていたエネルギーが噴き出している」と説明する。

 温室効果ガスを減らす手段として、多くの法案が柱としているのが、排出量取引だ。各企業に温室効果ガスの排出枠を割り振り、企業は枠を守るように省エネをするが、他社との間で枠を売買してもいい。

 ニューヨーク州など北東部10州は「地域温室効果ガス構想」(RGGI)という大規模な排出量取引を09年に始める。

 ブッシュ政権の姿勢と一線を画し、4年前から準備してきた。コネティカット州のクリス・ネルソン大気汚染担当官は「これがスタートすれば連邦政府への圧力になる。将来の全米規模での排出量取引のモデルになる」とみる。

 対象は火力発電所が出す二酸化炭素(CO2)。09〜14年は排出を横ばいにし、15年から毎年2・5%ずつ減らして4年間で計10%減らす。削減の一部は植林などでまかなえる。電気料金の変動を抑える工夫もあり、業界と消費者の声を丁寧に採り入れている。

 カリフォルニアやオレゴンなど西部5州も、似た制度をつくる。

 産業界にも変化の兆しがある。RGGIのように排出量取引の対象になりやすいのがCO2を大量に出す電力業界だ。これまでは「自主削減」だけを主張してきたが、最近、排出枠をはめられる取引制度も認める姿勢をとりつつある。

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 電力業界では、需要増大への対応や古い設備の環境対策で、今後15年間は巨額の投資が必要となるという。ある電力会社幹部は「国の規制方針がはっきりしないと投資判断がしにくい。いずれできるのであれば早く決めてほしい」と話す。

 もっと積極的な動きもある。今年1月、大手電力会社やデュポンなど大企業と、環境NGOがUSCAPという団体をつくり、「広い分野を対象にした排出量取引」などを政府に求めた。

 USCAPに加わったアルミ製造大手・アルコア社の政府交渉担当、リー・カリフさんは「温暖化は何とかしなければならない問題なのに、政府には指導性がない。対策をとることで、世界の米国への信頼を再構築する必要があると思う」。

 しかし、「京都議定書に復帰」という声はほとんどない。米国での温室効果ガスの排出量は、議定書が定めた削減目標の7%を大きく上回り、15・8%増(04年)。議定書を大事に考える日本や欧州連合の姿勢とは差がある。

 国際社会の枠組みとは異なるかたちで温暖化対策に動く米国の現状をみる。

 (編集委員・竹内敬二)

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