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株のように排出枠売買 脱温暖化社会へ 欧州の挑戦・1

2007年05月11日16時31分

 世界的な金融街、ロンドンのシティー。荘厳さを誇るイングランド銀行(英中央銀行)近くのビルの一室に、ECX(欧州気候取引所)社の小さな事務所がある。

写真パソコン画面に向かうコスターCEO。ネット上で国境を越え、CO2排出枠を売買する=ロンドン市内で、青田写す

 取引しているのは二酸化炭素(CO2)。伝統的な金融商品である株や債券を扱うのと同じように、排出できるCO2の枠の売買を仲介する。

 欧州連合(EU)は05年に排出量取引制度を導入し、各国政府を通じて約1万1000の大規模施設にCO2排出量の枠を割り当てた。事業活動などでその枠を超えてCO2を出した場合には、ほかから枠を買って埋め合わせないと1トン40ユーロ(約6500円)の罰金を科せられる。

 排出枠の総量は、EU全体の排出量のほぼ半分を占める。どう減らすかは各企業の判断にまかされるので、最も安い費用で削減できる手法とされ、EUの温暖化対策では中心的な政策になっている。

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 05年には3.6億トンだったEUでの排出量取引は、1年で10億トンに増えた。取引額も3兆円近くにのぼる。排出枠の取引所の役割を果たしているECXは現在、そのうち約半分のシェアを持つ最大手だ。

 アムステルダムの本社とあわせて社員6人の小所帯。にもかかわらず、81の会員には、米シティグループ、ドイツ銀行などの金融機関、国際石油資本(メジャー)の英BPなど世界有数の企業群が名を連ねる。

 コスター最高経営責任者(CEO)は「われわれの成長の余地は大きい。CO2に値段がついたことで、企業自らがエネルギー源の組み合わせを考えるようになった」と胸を張る。

 制度のスタートから2年。実は、取引市場は低迷している。一時、1トンあたり30ユーロ(約4900円)にもなったCO2価格は、最近は0.5ユーロ(約80円)にまで落ち込んでいる。排出枠を配分しすぎて、枠がだぶついたためだ。さほどCO2削減にも役立っていない。

 それでも欧州委員会(EC)の担当者は自信を見せる。「1期目(05〜07年)はデータを集め、手法を確立するための試験期間だった。2期目(08〜12年)からが実質的なスタートだ」

 2期目は、排出枠の配分が6〜7%減らされる見込みで、先物のCO2価格は20ユーロ(3250円)近くを保っている。

 当初反発していた産業界もコストをかけずにCO2を減らせるうえ、技術開発に役立ち、CO2排出に課税する炭素税より好ましいという点でECの考え方とほぼ一致しているという。

 世界自然保護基金(WWF)のステファン・シンガー欧州気候・エネルギー政策ユニット長は「取引制度が効果的に機能すれば、EUの排出削減につながり、グローバル化する炭素市場を進展させる」と期待する。

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 EUは、米国でニューヨーク州など北東部10州やカリフォルニアなど西部5州が始める排出量取引との連結も探る。

 金融界は、温暖化対策で生まれた新たな金融商品を「大きなビジネスチャンス」とみる。

 EUは97年の京都議定書で、08〜12年に温室効果ガスを90年比マイナス8%とすることが課せられた。その達成ばかりか、他国が減らさない場合でも20年には20%減らす独自の方針を打ち出している。

 大胆な目標に向け、市場やビジネスを巻き込んだ挑戦が動き出そうとしている。

 (この連載は編集委員・石井徹、ロンドン・青田秀樹が担当します)

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