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相殺でCO2ゼロ目標 脱温暖化社会へ 欧州の挑戦・3

2007年05月11日16時33分

 「こんなに快適だとは思わなかったわ」。英国北東イングランドのニューカッスルにある自宅で、キャサリーン・フォーセットさん(76)は声を弾ませた。

 夫のノーマンさん(76)と2人暮らし。古い住宅は冬、暖房が利きにくかった。だが昨春、公益企業が無料で断熱工事をしてくれたおかげで、この冬は暖かくすごせた。工事には、市民が二酸化炭素(CO2)を「オフセット」(相殺)するために支払った料金などが使われた。

 人口約28万人のニューカッスルは03年、世界初の「カーボンニュートラル都市」を目指してプロジェクトを始めた。目標は、市内で排出されるCO2約180万トンを2050年にはゼロにすることだ。

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 削減に必要なのは、まずCO2の排出量を知ること。市は「生活や旅行にどのくらいエネルギーを使っているか」を簡単に測れる方法を提供し、市民や企業に省エネの方法などを示して削減を促す。

 どうしても減らせないCO2については、植林や再生可能エネルギーなどCO2削減にお金を出し、差し引きゼロにすることを勧めている。

 例えば1400ccクラスの乗用車に1年乗ると排出量は3.7トンで、相殺するための費用は50ポンド(約1万2000円)かかる。ホームページには「あなたのオフセットが市内の家庭に暖かさを提供する」とある。

 市内の世帯の3割は、収入の1割以上が燃料費に消える「燃料貧乏」と呼ばれる家庭だ。断熱によって、貧しい世帯の燃料費とCO2を同時に減らせる。事業には電力会社などからの基金に加え、市民がオフセットした1万7000ポンド(約400万円)も使われた。

 担当マネジャーのシャロン・ハーディーさんは「2年間で2万軒の住宅に断熱を施し、19万個の電球を省エネ型に変えた。年間2万5000トンのCO2を削減できた」と誇らしげだ。

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 英国で始まったカーボンオフセットの市場が、急拡大している。自分が出したCO2の分を自主的に減らす仕組みに、企業はその社会的責任(CSR)、個人は慈善の観点から次々と加わる。昨年オフセットされたCO2は世界で約5000万トン、今年は約1億トンと見込まれている。

 カーボンニュートラル社(ロンドン)は、97年に設立された業界のリーダーだ。排出量を算定し、削減し、避けられない分を相殺する。エグゼクティブディレクターのジョナサン・ショプリーさんは「私たちがやっているのはオフセットビジネスではなく、CO2管理ビジネスだ」と強調する。

 年間売り上げ約450万ポンド(約11億円)の9割が企業向けだ。顧客にはエイビスやDHLなど国際的な企業のほか、日本のホンダやリコーなども抱える。

 再生可能エネルギーから省エネ対策、植林まで世界で数十のプロジェクトを手がけ、確実に相殺する態勢を整えている。

 英国政府は、国民にオフセットを広めるため、ガイドラインづくりに向けたパブリックコメントを実施。政府職員は06年から、航空機を使った出張で出したCO2を相殺している。ドイツ政府も今年から導入した。ノルウェーのストルテンベルグ首相は、2050年に温室効果ガスを国家単位でゼロにするとまで言い出した。

 温室効果ガスを減らす努力だけでなく、排出してしまう分をいかに埋め合わせるか。「オフセット」への関心は急速に広がっている。

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