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「先頭に立つ」強い意志 脱温暖化社会へ 欧州の挑戦・5

2007年05月11日16時34分

 3月8日、ブリュッセル。欧州連合(EU)首脳会議の夕食会で、ドイツのメルケル首相が力を込めた。

写真ブリュッセルで3月に開かれたEUサミットに出席したメルケル独首相(中央)=AP

 「温暖化問題への取り組みを強めたい。議長の私を支えてほしい」

 風力などの再生可能エネルギーの利用割合を2020年に6.5%から20%に引き上げる交渉が大詰めを迎えていた。

 石炭を多用するポーランドやチェコ、原子力の比重が高いフランスは抵抗した。妥協点を探る作業が徹夜で続けられ、声明文には「エネルギー源の組み合わせを考慮」「原発の貢献に留意」などの修正が盛り込まれるとともに20%の義務化が明記された。

 首脳会議では、温室効果ガスの排出量を20年に90年比で20%減らすことでも合意した。他の主要国が同調すれば30%に引き上げる。合意後、記者会見に臨んだメルケル首相は「温暖化対策で欧州は世界の先駆けになる」と言い切った。

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 「合意はEUの政治的な強い意志の表れだ。日本の一部にある冷笑的な見方は間違っている」と日本の外務省幹部は言う。「米国や中国との経済競争に勝つためのEUの成長戦略と見るべきだ」

 97年12月、京都。EUの代表団は、先進国の削減義務を2010年に90年比15%とする数字を持って京都会議に乗り込んだ。米国はゼロ、日本は平均で3.2%減という主張で交渉は難航した。だが、京都にやって来たゴア米副大統領(当時)が、米代表団に「柔軟な交渉」を指示したことで空気が変わる。

 その後の交渉は、欧米に引っ張られる形でEU8%、米国7%、日本6%に決まった。日本の交渉担当者には、「EUの15%は非現実的」「米国はゼロから動かない」といった声に引きずられて見通しを誤った苦い経験がある。

 「20年に30%削減というのが、『ポスト京都』の交渉でのEUのポジションだ」。欧州委員会で気候政策や国際交渉を担当するルンゲ・メッツガー課長は明言する。「この10年に多くの科学的知見が積み重ねられ、一方で温暖化は深刻化した。30%は、経済的分析や技術的実現性を加えてはじき出した数字だ」

 1月、ブリュッセル。30%削減を提案した欧州委員会のバローゾ委員長は、ビジネスリーダーたちにこう語った。「(低炭素社会へは)引っ張られて行くのではなく、先頭に立って行こう」。EUの産業界では、たとえ規制があっても「温暖化との闘いはビジネスチャンス」との受け止め方が広がる。

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 6日夜、フランスの新大統領に選ばれたサルコジ氏がコンコルド広場で演説した。歴代大統領の中でも親米的とみられているサルコジ氏が、米国に向けたメッセージでほとんどを費やしたのも温暖化問題だった。「米国のような大国は温暖化との闘いで邪魔をすべきでなく、先頭に立つべきだ。全人類の運命がかかっているのだから」

 EU加盟国も必ずしも一枚岩ではない。環境相か産業相か、同じ国の閣僚でも、立場が違えば考えも多少異なる。だが「大事なのはトップの政治的な意志、そして議長国の熱意だ」と、EUの交渉担当者は強調する。

 6月にドイツで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)。10年前の京都会議で環境相として交渉を引っ張り、いまEU議長でもあるメルケル首相が議長を務める。重要テーマの一つが、「ポスト京都」を見すえた気候変動問題だ。=おわり

 (この連載は編集委員・石井徹、ロンドン・青田秀樹が担当しました)

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