現在位置:asahi.com>ニュース特集>地球環境> 記事 東京湾、進む酸欠 貝やカニが窒息死2007年09月21日14時31分 きれいになったと思われている東京湾で、実は酸欠状態が深刻になっている。東京・お台場周辺で海中生物の生息状況などを調べている研究者らの潜水調査に同行したところ、黒いヘドロで覆われた海底には、窒息死したカニや貝の死骸(しがい)が散乱。河川に含まれる有機物や栄養分が一因とされ、環境省は規制を強めているが、改善はみられないという。
潜水調査をしたのは研究者やダイバーが会員の「東京港水中生物研究会」。17日、お台場の「船の科学館」に係留される羊蹄丸周辺など2カ所に潜った。 羊蹄丸のポイントは水深約10メートル。海中は、濁りで数十センチ先も見えない。徐々に水深を落とすと、知らない間に足が黒いヘドロに埋まっていた。表面には貧酸素の影響で現れた白いバクテリアがうっすらと広がる。 水深が浅い岩場にはハゼの仲間がいたが、3メートル以上潜ると生物の影はなくなった。護岸に張り付くムラサキイガイの死骸が、海底に散乱している。「夏場は毎年、酸素がなくなって死んでしまう」と研究者の一人。 約30年前から東京湾で潜水を続ける同会の風呂田利夫・東邦大教授(59)は「以前よく見られたアイナメやカレイなどの大型魚が、ここ10年ほどは海底から消えた。東京湾はきれいになったと言われるが、90年代半ばから貧酸素化は進んでおり、抜本的な解決が必要」と指摘する。海底の黒いヘドロは貧酸素の影響で発生した硫化鉄で、湾の奥部全体に広がっているという。 東京都環境科学研究所がまとめた84〜05年の東京湾湾奥部の水質データによると、9月の1リットルあたりの溶存酸素(DO)は00年以降、目立って悪化。04年以外は毎年、調査22地点のうち8割以上の場所で生物の生息が難しいDO3ミリグラム以下を示した。99年以前の16年間では86、88年だけだった。 風呂田教授らによると、貧酸素化が進行する一つの要因は下水処理水など河川からの生活排水の流入だ。下水処理水には窒素やリンなどの栄養分が含まれ、酸素を消費する有機物を大量に発生させるためだ。ほかにも沿岸の干潟の減少などが指摘されている。 環境省は01年の第5次水質総量規制で、工場などから流れ出る窒素やリンを規制対象に加えた。しかし「貧酸素の水塊は毎年出現しており、生物の生息環境は改善されていない」(同省閉鎖性海域対策室)という。 ◇ 〈キーワード:東京湾の貧酸素化〉海底にたまる有機物や植物プランクトンの死骸の分解に酸素が消費されるために生じるもので、生物の生息環境の悪化を招き、「東京湾最大の環境問題」とも言われる。夏は、海面と海底の水温差や塩分濃度差が大きく上下層の水が混じりにくいため、表層の酸素が行き渡らず発生しやすい。 PR情報 |