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気候政策、争う欧米〈環境元年 エコ・ウオーズ:4〉

2008年2月6日16時47分

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写真昨年12月、インドネシア・バリ島であったCOP13に合わせ、「地球環境国際議員連盟(GLOBE)」のメンバーである欧米の議員らも、ポスト京都について意見を交わした

 環境問題、とりわけ気候変動対策が国際政治を動かす重要な要素になりつつある。牽引(けんいん)役はこの分野でのリーダーを自任する欧州だが、米国でも大統領選の課題に浮上。「環境政治」の競り合いの帰趨(きすう)に地球の未来がかかる。

 ◇EU、「一人勝ち」ねらう

 「非常に重要な前進だ」。インドネシア・バリ島での国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)が終わった12月15日、欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長はこう評価してみせた。

 「ポスト京都」への交渉で先進国の目標数値を盛り込もうとしたEU提案は、米国などの反発で実らなかったが、それも想定のうちだった。

 ブリュッセル・ボーリュー地区にあるガラス張りビルが、EUの環境政策の中枢を担う欧州委員会(EC)環境総局だ。EUの「環境エリート」たちは「気候変動問題で世界をリードする」と公言してはばからない。同総局幹部は「ブッシュ氏がホワイトハウスにいる1年は、09年の交渉に備える年。米国抜きでも仕事はたくさんある」と、自信を漂わせる。

 EUは07年3月の首脳会議で、京都後の数値目標に早々と合意した。2020年までに温室効果ガスを90年比20%削減することなどを掲げる。

 加盟国の首脳たちも前のめりだ。昨年11月、ブラウン英首相は英国が2050年までに80%のCO2削減をするべきかどうか、第三者機関に諮ると語った。60%を目標としてきたが、仏独が似た目標を打ち出し、国内では保守党も80%削減を言い出した。政権維持のためにも引き上げる必要が出てきたのだ。

 環境相も務めたメルケル氏が首相のドイツは、12月、20年までに温室効果ガスの40%削減(90年比)という野心的な目標を打ち上げた。COP13の時期に合わせた政策決定に、EUの中でも半歩先を行こうとする首相の思惑がのぞく。

 欧州では、気候変動問題は「環境保護に関心のある人だけが訴える『グリーンイシュー』から政治課題に変化した」(環境総局幹部)。自動車業界団体の幹部は「知識層やNGOが温暖化対策を訴え世論をリードしている。後ろ向きな政治家や企業は攻撃対象になる」と言う。

 欧州議会はこうした世論を反映する。欧州緑の党・欧州自由連盟の副議長、レベッカ・ハルムズ議員(ドイツ)は、欧州議会の特徴を「比例代表制で、選挙は地域のしがらみ無しの党政策で決まるから、超国家的な思考ができる」と語る。緑の党が政治勢力として台頭したのは90年代だが、いまや環境問題への積極姿勢は党を問わない。

 EU内には不満の声もある。産業団体「ビジネス・ヨーロッパ」の環境担当ニック・キャンベル氏は「EUが独走すると国際競争力を失うのは欧州産業界だ」。新規加盟の東・中欧諸国も温室効果ガス削減計画でECの厳しい「査定」に遭っており、ポーランドのトンビンスキーEU代表部大使は「机上の計算を押しつけ、経済発展の権利を制限するのは賢いやり方ではない」と漏らす。

 だが、環境総局気候戦略課のリーフェブレ氏は「我々がこの問題で先行したい理由は三つある。経済競争力の向上、技術革新の促進、エネルギー安全保障の強化だ」と言う。

 EUはすでに27カ国約4億9千万人の巨大市場だ。省エネ・低炭素技術で世界に先んじ、それに合わせた規制を導入すれば、欧州企業の一人勝ちとなる。「これはビジネスチャンスなのだ」(デルベク・同総局気候変動局長)

 ◇米、大統領選の主要課題

 クリントン上院議員「気候変動対策で国際交渉を主導する大統領を選ぶ時が来た」

 オバマ上院議員「気候変動との戦いは米国が主導する」

 過熱する米大統領選・民主党の指名レース。候補者らの演説は欧州への対抗意識とブッシュ政権批判がむき出しだ。クリントン氏は12月に出した声明で「私が大統領になれば、京都議定書に代わる合意に向けて3カ月ごとに国際会議を開く」とまで踏み込んだ。

 地球温暖化対策が重要な政治課題に浮上し、ワシントンでは「政治の気候変動が起きた」とのジョークもささやかれる。背景には、社会の意識変化がある。ハリケーン被害などで温暖化の脅威が広く理解されるようになり、環境重視を意味する「グリーン」が時の言葉となった感がある。

 クリントン氏が「炭素に基づく経済を、効率的でグリーンな経済にしよう」と訴えれば、オバマ氏も「炭素経済に幕を引き、クリーンなビジネスに変える時だ」と説く。発言から透けて見えるのは、経済界への配慮だ。

 ワールドエナジー社の上席副社長で、ゴア前副大統領の政策アドバイザーを務めるリック・アドコック氏は「経済界からの圧力で特に大きいのは、グローバル市場で競争する多国籍企業からのものだ。彼らは京都議定書の枠内で仕事をするうち、米国が気候変動対策で指導力を発揮すべきだと主張するようになり、株主にも支持されている」と指摘する。

 グローバル企業はイメージ向上と利益確保の観点から、新エネルギー開発や排出権市場の創出を求める。ニューヨーク金融界にも「このままでは排出権市場を欧州勢に独占される」との危機感が台頭しているという。

 両候補の環境政策はよく似ている。新たなエネルギー産業育成で「数百万人の雇用を創出」(オバマ氏)、「米国にブルーカラー、ホワイトカラー以外にグリーンカラーをつくる」(クリントン氏)。国内の排出権取引導入や、2050年までに温室効果ガス排出量を90年比で80%削減するとの目標設定は、エドワーズ氏らもほぼ同じだ。

 他方、共和党政権が続いた場合、温暖化政策の見通しは不透明だ。ホワイトハウスの環境評議会議長、ジェームズ・コノートン氏は「京都後の枠組みづくりを成功させるには柔軟な目標を立てる必要がある」と語り、共和党政権下では欧州流の数値目標を採らないとの見通しを示す。

 共和党候補はマケイン上院議員が温室効果ガス削減目標を盛り込んだ法案を推進。ハッカビー氏は排出権取引制度に賛成だが具体策は乏しい。ジュリアーニ前ニューヨーク市長は温室効果ガス削減の義務づけに反対で、原発推進に力点を置く。

 ブルッキングス研究所のジェイソン・ボードフ氏は不気味な予測を口にした。「排出権取引や温室効果ガス削減は、企業や個人の負担につながる。共和党が大統領選や議会選挙でその点を鋭く突けば、どうなるか」

 選挙戦は「次のアメリカ」だけでなく、「ポスト京都」をも左右する。

 ■主な温暖化対策関連日程

08年1月 京都議定書の約束期間(12年まで)スタート

    同 EUが気候変動・エネルギー政策包括案発表

    同 ダボス会議(スイス)

    同 米国主催の主要排出国会議(ハワイ)

   3月 EU環境相理事会

   5月 G8環境相会合(神戸)

   6月 G8エネルギー相(青森)、財務相(大阪)、外相(京都)の各会合

   7月 北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)

   9月 国連主催のハイレベル会合?

  11月 米大統領選挙

  12月 ポズナニ会議(COP14)=ポーランド

09年1月 米第44代大統領就任

  11月〜12月

      コペンハーゲン会議(COP15)=デンマーク 京都議定書に代わる国際合意(予定)

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