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政策動かすNGO〈環境元年 エコ・ウオーズ:6〉

2008年2月6日16時55分

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写真温暖化対策を訴える学生たち。グリーンジョブ(環境にやさしい技術に伴う雇用)を象徴する緑色のヘルメット姿もある=07年11月、米ワシントンDCの議会議事堂前で写真NGOの連合体「CAN」がCOP期間中、発行する機関紙「ECO」。政府代表も読んでいる=07年12月、インドネシア・バリで

 気候変動対策の分野でNGO(非政府組織)が存在感を増している。地球環境の問題は、国境を超えて共有され、専門性も求められるだけに、NGOの果たす役割は大きい。温暖化を引き起こす側にも被害者にもなりうる市民は、どう挑戦できるのだろう。

 ●豊富な人材・戦略力、強み

 「エイティー・バイ・フィフティー(2050年までに温室効果ガスの80%削減を)!」

 昨年11月、ワシントンDCの米議会議事堂前の芝生で、全米から集まった約6千人の学生たちが連呼した。有志の議員もともにマイクを握った。

 その翌月、発電所や工場などの温室効果ガスの排出量を制限する「米気候安全保障法案」が上院の委員会で初めて可決された。産業界の抵抗が強く、実現不可能と言われてきたこの立法のエンジンとなったのが、NGOだった。

 議事堂の周辺に事務所を構える環境NGOは少なくない。「ロビイスト」と呼ばれるNGOメンバーが日常的に議員を回るためだ。

 NGO「ピュー気候変動センター」で気候安全保障法案に携わったマニク・ロイさんにとっては昨年8月が正念場だった。議員が不在になるバカンスシーズン。時間に余裕ができる議員スタッフと法案を詰め、同じような立法を検討する他の議員事務所と調整した。

 11月、小委員会で法案が審議されたときには、7議員のうち態度がはっきりしない3人を集中的に回った。可決を確信できたのは採決の2日前。4対3の小差だった。

 ロイさんは大学院で環境政策博士号を取り、議員スタッフとして、また州政府で働いた経験もある。「政治家は市民の代表者にすぎない。NGOがサポートするのは自然なことだ」という。

 上院のある議員政策スタッフは「細かい立法作業では人材豊富なNGOにかなわない。政治家がやるべきことは、正しいデータをもとに正直に話すのはだれか見極めること」と打ち明けた。

 「人材力」だけでなく「戦略性」も米国の環境NGOの柱だ。昨年4月には、最高裁から歴史的な判決を引き出した。

 連邦政府を相手に、13のNGOが12州と共同で起こした訴訟で、最高裁が二酸化炭素などの温室効果ガスを大気汚染物質と認定し、排出規制をしていない連邦政府に政策の見直しを促したのだ。

 弁護団は原告のNGOと州各三つで結成。リーダーを務めたNGO「自然資源防衛評議会(NRDC)」気候政策ディレクターのデビッド・ドニガーさんは「政府のやり方を正し、問題点を明確にできる訴訟は有効な手段だ」と話す。

 NRDCは300人のスタッフのうち100人が弁護士だ。有力なNGOはどこも科学、経済、法律など関係分野の専門家をそろえている。

 訴訟の焦点は、カリフォルニアなどの州が独自に自動車が排出する温室効果ガスを規制しようとしたのに、連邦政府が承認しないことの是非だ。18州が導入を検討中で、承認さえあれば、米国の人口の半分が住む地域で排出削減が実現できる。

 NGOは州を訴えることもあるが、今回はともに原告席に並ぶ戦術に出た。NGOだけでは原告適格がないと判断される可能性があった。

 州にもNGOと協力するのは得策と映った。マサチューセッツ州エネルギー環境局のボールズ長官は「専門性が高いNGOと連携したから勝てた」と振り返る。

 最高裁判決にもかかわらず連邦政府は12月、車の燃費を改善させる法律ができたことなどを挙げて、州独自の規制は認めないと表明した。すぐ批判の声明を出したNGOと州は、すでに次の手を進めている。

 ●日本、まず意識変化から

 92年のブラジル・国連地球サミット、京都議定書が生まれた97年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)と、地球環境をめぐる分野でNGOは存在感を確立してきた。国境や国益を超えたテーマで連携して政策提言できるのが、NGOの強みといえる。

 「気候行動ネットワーク(CAN)インターナショナル」は世界400以上のNGOの連合体。毎年開催されるCOPでは一致した姿勢で臨む。

 12月にインドネシアで開かれたCOP13。参加国にどう働きかけるかをめぐり、CANの欧州、米国、日本、アジア、アフリカなど地域代表からなる中心メンバー約20人は毎朝、戦略を練った。

 政府間の非公式会合が朝方まで続けば、NGOメンバーも現場を離れない。協議に後ろ向きな国には「今日の化石賞」を与え、ユーモアと皮肉でこきおろす。会議の動向は、毎朝発行する「ECO」でウェブを通して世界に伝えられる。温暖化への市民の関心が高まり、各国政府もこうしたNGOの監視や評価を無視できなくなった。

 ただ、力を蓄えてきたゆえの悩みもある。CANをリードする欧米のNGOの間では、成長が著しい途上国にも排出削減に何らかの貢献を求める意見が強まってきた。一方、途上国のNGOには自国の貧困や発展も目をそらせない課題だ。

 インドのNGO「エネルギー資源研究所」のサンジェイ・バシさんは、「先進国の多くが削減目標を果たせそうにない現状で寄与を求められても、途上国はどうして乗れるだろう」と悩む。

 NGO「フレンズ・オブ・ジ・アース・ジャパン」で10年以上、気候変動問題にかかわってきた小野寺ゆうりさんは「専門性や当局との人的つながりを活用する洗練された手法で、欧米の環境NGOは影響力を得てきた。それが、途上国を含む、より幅広い市民のかかわりを難しくさせている面もある」と指摘する。

 日本ではNGOという言葉が定着する前から公害や原発問題などで市民が声を上げてきた。現在、気候変動の領域で活動するメンバーの多くも、そうした経験をもつ。しかし日本の政府や社会がNGOの力を十分、生かしているとはいえない。

 NGOで経験を積んで政府で働いたり、政府からNGOへ移ったりといった人の流れは欧米ではよくあるが、日本ではまれ。多数のスタッフを抱える欧米のNGOとは資金力で比較にならない。

 NGO「気候ネットワーク」の浅岡美恵代表は「日本では行政の方向性を変えるのは容易ではない」と痛感する。「政府のやり方を変えるには、まず国民の意識の変化から。NGOは市民にも常に新しい働きかけをしていかなければならない」

 受け止める市民の側も問われる作業だ。

 ■米国内の気候変動対策をめぐる動き■

01年    ブッシュ政権誕生。京都議定書から離脱

02年    環境NGOの活動がさかんなカリフォルニア州が全米で初めて自動車由来の温室効果ガス排出削減の立法

05年    北東部の州が排出総量制限を含む排出量取引協定RGGIに合意

06年 5月 ゴア前副大統領の映画「不都合な真実」一般公開。のちにアカデミー賞受賞

    9月 カリフォルニア州が各産業の排出規制の立法

07年 1月 NGOと一部の大企業が主要排出源の削減義務づけなどを求めるUSCAPを設立

    4月 複数州とNGOが連邦政府を相手取った訴訟で、最高裁が連邦政府に車由来の排出規制を事実上促す初判断

    9月 車由来の排出規制をめぐり自動車メーカーに訴えられたバーモント州が全面勝訴。12月にはカリフォルニア州も勝訴。いずれもNGOが訴訟支援。

   12月 気候安全保障法案が上院委を11対8で通過

       車の燃費基準を改善させる新エネルギー法が成立

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