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首相辞任でハシゴ外され、当惑と怒り 拉致、年金など

2007年09月13日02時27分

 教育再生、拉致や年金問題の解決、憲法改正――安倍首相が掲げた諸改革も頓挫しかねない状況になった。突然外されたハシゴに、首相に期待を寄せた人たちの間には、当惑と落胆、そして怒りが広がった。

 ■教育・拉致・肝炎訴訟

 辞意表明から2時間後の12日午後4時過ぎ、官邸で政府の教育再生会議の合同分科会が始まった。2時間の予定だったが、実質的な議論はなく1時間弱で終わった。

 集まった報道陣からは「会議は存続するのか」という質問が相次いだ。山谷えり子・首相補佐官は「再生会議があればこその成果が出てきている。存在意義は大変大きいと思っている」と説明したが、その言葉に力はなかった。

 居酒屋チェーン「ワタミ」の渡辺美樹社長は「大変残念です」と繰り返した。「(年末の)第3次報告まで頑張っていただきたかった」

 川勝平太・静岡文化芸術大学長は「第3次報告をぜひまとめたい。ホップ、ステップで、ジャンプしてないから。委員の大半はやる気ですよ」と話す。だが、来週に予定されていた次回の会合も白紙となった。

 夕方から都内で記者会見を開いた拉致被害者家族会と支援団体「救う会」のメンバーも落胆の色を隠さなかった。

 家族会の増元照明・事務局長はテレビの速報に言葉が出なかったという。「毅然(きぜん)と北朝鮮にもの申していく姿勢を支持し、信頼してきた。辞任は少なからず影響があると考えています」

 飯塚繁雄・副代表は、辞任を残念がる家族会のメンバーから電話を何本も受けた。「ものすごく大きな問題を抱えて悩み、自分の力では限界だという決断をなされたと思います」と同情する。

 東京・霞が関の厚生労働省前では、薬害C型肝炎訴訟の原告団が、舛添厚労相との面会を求めて10日から続けていた座り込みが中止になった。「政局が大混乱する中、体を張っても進展は望めない」からだ。

 首相は6月、柳沢伯夫前厚労相に「従来の延長線上ではない肝炎対策」を指示し、与党が治療費助成の本格検討を始めた矢先だった。原告団の福田衣里子さん(26)は「ろくな仕事もせずに突然辞めるなんて、ふざけないでほしい」と怒る。

 ■格差・改憲・年金

 安倍首相が掲げたスローガンや政策は、いったんご破算になった。有権者はどう受けとめたか。

 東京都千代田区の靖国神社。この日が誕生日の江戸川区の自営業藤沢健二さん(61)は、毎年自分の誕生日に参拝し、戦没者を慰霊している。

 首相が就任直後、憲法改正や「戦後レジームからの脱却」を掲げた時、具体的に何をするのだろうか、と期待を抱いた。それだけに実現をみないままの辞任表明を「無責任ですよ」と語った。

 千葉県八千代市の山田重義さん(60)は自民党支持。だが、安倍氏については「これだけ格差が広がる中、抽象的な『美しい国』では駄目。もっと国民が暮らしの豊かさを感じられる政策が必要だった」と指摘した。

 東京都豊島区の主婦砂金圭子さん(51)は東京・銀座で「憲法改正はしてほしくなかったので、その点では安心した。いったん道筋がつくと、そのまま戦争まで進んでしまいそうだから」。

 首相は「信頼できる年金」を約束した。生活は年金が頼りの京都府福知山市の新元(しんもと)忠さん(67)は「医療費も上がり生活はぎりぎり。何とかしてほしい、と期待していたが、不祥事対応ばかりで、生活にかかわることには腰を上げなかった。あっさり辞めるなんて裏切られた感じだ」。観光で訪れた東京・巣鴨の地蔵通り商店街で話した。

 首相は「改革の果実を地方に」と訴えていた。しかし、北海道夕張市職員の上木和正さん(57)はテレビで演説を聞いても「心に響いてこなかった。地方というものを実感として分かっていない人だと感じた」。辞意の報に「遅きに失したというより、あきれてしまう」とつぶやいた。

 500社以上の試験や面接などを受けてきたという東京都世田谷区の無職男性(35)は渋谷のハローワーク近くで「安倍さんは庶民の気持ちは分からない。格差問題に取り組むといっていたが、口だけ。最初から期待していなかった」と話した。次の首相に名前が出ている麻生太郎・自民党幹事長についても「二世議員で、庶民感覚がないのは同じ」と、突き放した。

 安倍首相は8月、原爆症の認定基準見直しを表明した。長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄(すみてる)会長は「やりとげないまま辞めてしまうなんて信じられない。あまりに無責任だ」と憤った。

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