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福田内閣、試練の船出 外交・経済かじ取りどうなる

2007年09月26日01時52分

 福田首相が直面する外交・内政の課題は多い。「対外公約」となった海上自衛隊のインド洋での給油活動を継続できるかどうかは、今後の日米関係のありようにもかかわる。「対話と圧力」を掲げる北朝鮮への対応では、安倍前首相より「対話」の比重を増やす構えだ。一方、参院選惨敗の主な原因となった格差の是正では、小泉政権以来の構造改革路線をどう修正するかが焦点となる。「福田丸」の政策のかじ取りは――。

 ●外交 給油継続どう打開 拉致解決へ対話も

 福田首相は森・小泉両内閣の官房長官当時、「影の外相」とも呼ばれ、01年の米同時多発テロを受けたテロ対策特別措置法制定を主導し、小泉・ブッシュ両首脳による日米蜜月を支える黒衣役に徹した。引き続き日米関係を基軸としつつ、アジア重視の外交に取り組む考えだ。

 新政権が最初に直面する外交課題は、海上自衛隊のインド洋での給油の根拠法で、11月1日で期限切れとなるテロ特措法の延長問題だ。福田氏は活動を継続させる意思を明確にしている。

 もともとテロ特措法は「憲法の枠内」におさまるように法制化され、戦闘状態のアフガニスタン本土への自衛隊派遣はできない。海自の給油は、多国籍軍の後方支援を日本が担うアピールの意味合いが強い。国益が強調されがちな安全保障の議論だが、テロ特措法には福田流の「安全、安上がり」という合理主義も反映している。

 このため、福田氏は安倍前首相が積極的だった集団的自衛権の見直しには慎重だ。ただ、国連PKOや平和構築への参加には前向きで、テロ特措法のような時限立法ではなく、海外への自衛隊派遣を定める恒久法を検討したい考えだ。

 さらに注目されるのは北朝鮮の拉致問題への対応だ。福田氏は総裁選で「私の手で拉致問題を解決したい」と訴え、「拉致が解決し、核もミサイルも『もうやめた』となれば国交ができる。日本海を中心とした地域が次の発展を迎える」など国交正常化に道筋をつける意欲を示した。

 日本政府の基本姿勢は「対話と圧力」だが、福田政権では安倍政権の「圧力」重視から「対話」により比重を置く路線転換を模索することになりそうだ。当面の課題は10月13日で期限切れを迎える対北朝鮮経済制裁への対応だ。

 安倍前首相は「自由と民主主義という共通の価値」を持つとして、インド、豪州などとの連携を強化。こうした姿勢は中国への牽制(けんせい)とも受け止められていた。

 これに対し、福田氏は「どの国ともできるだけ滑らかな平和な関係を築くこと」を外交の基本に据える。「相手が嫌がることをする必要はない」として、靖国神社参拝はしないと明言。日中韓の連携強化を訴える。

 また、父の福田赳夫元首相が提唱した東南アジア外交の基本方針「福田ドクトリン」を発展させることにも意欲的だ。官房長官当時の私的諮問機関「国際平和協力懇談会」は02年12月、政府の途上国援助(ODA)の紛争予防、復興支援への活用や、平和構築の分野で官民連携して人材育成、研修などを行うことを提言した。

 理念が先行しがちだった安倍外交に比べ、福田外交は国際協調、現実主義が、より前面に出たものになりそうだ。

 ●経済 市場主義にブレーキか 増税にらみ「プロ」重用

 経済財政政策では、小泉・安倍政権と続いた構造改革路線が、福田政権の発足で大きな岐路を迎えている。

 無駄を省いて歳出削減を図り、規制改革などによって民間に委ねられる事業を民間に移し、市場競争を活性化して経済成長を促す――。小泉元首相は「改革なくして成長なし」と繰り返した。

 これに対し、福田氏は「経済合理主義の行き過ぎた形だと思う」(19日、外国特派員協会で)と語り、自民党総裁選を通じて「共生」という言葉を繰り返した。

 官邸の変化に、早くも「『市場』や『競争』という言葉を使いにくくなる。説明の仕方を工夫しないと」(政府関係者)との声があがる。「小さな政府」の実現と、税収の自然増につながる経済成長戦略としての「民間活力の活用」が後退しかねない。

 小泉元首相が郵政民営化と並んで意欲を示してきた道路特定財源の一般財源化の行方にも不透明感が増している。

 福田氏は23日の党総裁就任後の会見で「払っている人の利益に関係のないところで使われるのはどうか、ということは議論した方がいい」と慎重な姿勢を示した。もともと与党の反発が極めて強い政策だけに、官邸の姿勢に変化があれば頓挫する可能性もある。

 一方、歳出増につながりそうな施策は目白押しだ。基礎年金は09年度に国庫負担分を現在の3分の1から2分の1に引き上げることが決まっており、約2.5兆円の新たな財源が必要となる。民主党や日本経団連の御手洗冨士夫会長はさらに、基礎年金全額の国庫負担化を主張しており、福田首相も選択肢として検討を否定していない。

 与党はまた、08年度に予定される高齢者医療費の負担増の凍結について「早急に結論を得て措置する」ことで合意。1000億円を超える国庫負担が発生する可能性もある。

 しかし、06年に閣議決定された政府指針「骨太の方針」には、5年間で最大14.3兆円の歳出削減方針が盛り込まれている。福田氏はこれまで歳出減の具体策を示していない。政府公約の「基礎的財政収支の2011年度の黒字化」に黄信号がともりかねない。

 消費税増税の行方も注目される。

 福田首相の党役員・閣僚人事で、政調会長に就任したのは小泉政権下で一貫して財政再建路線を主張してきた谷垣元財務相。町村官房長官、伊吹自民党幹事長ら自民党税調出身者も並び、「税金のプロ」がにらみをきかせる構図になった。

 消費税率見直しの議論を本格化させる布陣が整ったといえ、谷垣氏は24日のテレビ番組で「そろそろ逃げずに(議論を)やらないと(国民生活が)おかしくなる」と早速意欲を示した。

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