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指導と暴力、考えに差〈力士暴行死再検証 中〉

2008年7月11日11時5分

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写真5月18日、前日の言動を翻し、弟子への暴力について謝罪する間垣親方=東京・国技館

 その夜、東京都墨田区の間垣部屋に詰めかけた報道陣に対し、間垣親方(元2代目横綱若乃花)は開き直った。「弟子が悪いことをしたら、しごくのは当たり前。どこの部屋でもやっている」

 夏場所7日目の5月17日。日本相撲協会は十両の豊桜が同じ陸奥部屋の若手力士に暴力を振るっていたことと、間垣親方が竹刀で弟子をたたいていたことを明らかにした。

 傷害致死罪で起訴された前時津風親方(山本順一被告)らの公判準備が進む中で発覚した新たな暴力行為。豊桜は「時津風の事件を軽く思っていたところがあった」と師匠の陸奥親方(元大関霧島)と一緒に頭を下げたが、間垣親方は正式な会見はなし。暴力を振るった理由は「素行が悪い」とだけ説明され、具体的な中身は被害者への配慮として発表されず、幾筋もみみず腫れがついた下半身の写真のみが公開された。

 理事として協会の指導的立場にある間垣親方の発言に、ある幹部は顔をしかめた。「確かに部屋ごとの指導方針に違いはある。だが、相撲界を挙げて暴力一掃に取り組んでいる時に、先頭に立たないといけない理事が『他の部屋でもやっている』と言うなんて、とんでもないことだ」

 一夜明けて、間垣親方は前言を撤回。「悪いことをした子を良くしてやろうとしたが、やりすぎた。今後は違う指導をしていかないといけない」と謝罪した。だが、再発防止検討委員会のやくみつる委員は「(問題行為があれば)破門の方が現実的だったと思う。自分たちの考え方がまだまだ浸透していないと感じた」と評した。

 「暴力」に対して協会内に温度差があることが、改めて明白になった一幕だった。

 どれだけ世間の風当たりが強くなっても「周囲の見る目が変わっただけ。我々がやることは同じ」という意識は角界に根強い。現役時代の実績が華やかだった親方衆に特にその傾向が見える。協会の自己調査も「時津風事件は異質」と結論付けた。

 一方でこの1年、平身低頭して新弟子を集め、後援会に説明してきた親方たちがいる。「どこに行っても、その話題が出る。しばらくは一般の人の前で大声で笑うことは控えた」。若手師匠の言葉は切実だ。

 名古屋場所を前にある師匠は悩みをうち明けた。

 「指導はまず言葉で。聞かない時には手を出しもしたが、今はそれは通用しない。でも生活態度の悪い者は、集団生活の中には必ずいる。彼らを指導せずに辞めさせてしまえばいいというのか」。指導と暴力の垣根をどう見極めるか。難問に真剣に向き合うほど、苦悩は深まる。

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