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年末年始特集

ノーベル物理学賞、素粒子研究の日本人3氏に

2008年10月8日

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写真ノーベル物理学賞受賞を喜ぶ南部陽一郎(なんぶ・よういちろう)さん=7日午前7時34分、米イリノイ州シカゴ

写真ノーベル物理学賞の受賞が決まり、会見する京都産業大の益川敏英(ますかわ・としひで)教授=7日午後7時19分、京都市北区

写真ノーベル賞受賞の喜びを語る小林誠(こばやし・まこと)さん=7日午後8時16分、東京都千代田区一番町

 スウェーデン王立科学アカデミーは7日、今年のノーベル物理学賞を、素粒子物理学の理論づくりに貢献した米シカゴ大名誉教授で大阪市立大名誉教授の南部陽一郎氏(87)と、新たな基本粒子の存在を共同で提唱した高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)名誉教授の小林誠氏(64)と京都大名誉教授で京都産業大理学部教授の益川敏英氏(68)の日本人計3人に贈ると発表した。日本人が一つの賞で同時受賞するのは初めて。

 日本人のノーベル賞受賞は02年以来で13、14、15人目。物理学賞は同年の小柴昌俊・東京大特別栄誉教授に続き、5、6、7人目。

 賞金は1千万スウェーデンクローナ(約1億4千万円)で、南部氏に半分を、小林、益川両氏に4分の1ずつをそれぞれ贈る。授賞式は12月10日、ストックホルムである。

 宇宙やわれわれは、いったい何からできているのか。人類はこの根源的な謎に、長年挑み続けてきた。3氏はあらゆる物質を形づくる基本粒子の研究で先駆的な理論を提唱し、現代の素粒子物理学の基礎を築いた。

 南部氏の授賞理由は「対称性の自発的破れのしくみの発見」。物質をつくる素粒子になぜ質量があるのかという宇宙の成り立ちにかかわる根源的な謎を、素粒子の対称性が失われてしまうという現象から解き明かす考え方を61年に提唱した。その後の素粒子物理学の発展に大きな影響を与えた。素粒子の質量を探る研究のほか、自然界に存在する力を統一的に論じるという現在の研究は、南部氏の理論を土台に発展してきた。素粒子研究の中で、南部氏はこれ以外にも、次々と斬新な考えを打ち出した。

 小林氏と益川氏の授賞理由は、宇宙の成り立ちにかかわる「CP対称性の破れ」という現象が起きる理由を、73年に理論的に説明したことだ。両氏は、この不思議な現象を説明するためには、物質をつくる基本粒子「クォーク」が自然界に少なくとも6種類必要だと予言した。論文の筆者の順から「小林・益川理論」と呼ばれるようになったという。

 この予言は、各種の実験でその正しさが確かめられ、いまの素粒子物理学の基礎である「標準理論」の柱に発展した。

●基礎研究者、勇気づけた

<01年に化学賞を受賞した野依良治・理化学研究所理事長の話> 3本の日の丸があがったのはすごいことだ。日本の科学技術政策が時として実益主義や経済効果が求められてきている中で、本当に基礎の基礎の科学が認められたのがうれしい。これからの基礎研究者を勇気づけるものだ。日本としても自信を持っていいと思う。南部先生は素粒子物理のパイオニアとして受賞は遅すぎたと思う。小林・益川両先生は名古屋大の坂田昌一博士のお弟子さんということで、名古屋大理学部に長くいた自分としては個人的にもうれしい。

<南部陽一郎さんの話>

 本当に光栄に思います。しかも小林さん、益川さんと同時なのは非常にうれしい。2人もいずれは取るに値すると思っていた。毎年のように記者が取材に来ているが、今年も特に期待していたわけではない。

    *

 なんぶ・よういちろう 21年東京生まれ、37年旧制福井中卒。42年東京帝国大理学部物理学科卒。米シカゴ大名誉教授、大阪市立大名誉教授。78年文化勲章。70年に米国籍を取得。シカゴ在住。

<小林誠さんの話>

 突然の事で大変驚いています。まったく予想していなかったので、ちゃんとした言葉が出なかった。突然、昔の仕事で賞をいただき奇妙な感覚です。大先輩の南部さんと同時に受賞でき、大変うれしく思っています。

    *

 こばやし・まこと 44年名古屋市生まれ、63年愛知県立明和高卒。72年名古屋大大学院博士課程修了。高エネルギー加速器研究機構名誉教授。95年朝日賞。01年文化功労者。

<益川敏英さんの話>

 尊敬している南部先生の受賞が一番うれしいです。(自身の受賞は)たいして、うれしくありません。02、03年の実験で、我々が言った理論が正しいと分かり、科学者としてみれば、それが一番重要でした。

    *

 ますかわ・としひで 40年名古屋市生まれ、58年名古屋市立向陽高卒。67年名古屋大大学院博士課程修了。京都大名誉教授、名古屋大特別招へい教授。95年朝日賞。01年文化功労者。

(2008年10月8日 朝日新聞朝刊)


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