
東京・霞が関の警視庁に22日午後9時20分、車で男が乗り付け、入り口にいた警察官に「事務次官を殺した」と話した。男は刃物数本をもっていた。同庁は男の身柄を麹町署に移し、銃刀法違反容疑で逮捕する方針。元厚生事務次官宅連続襲撃事件に関与した疑いが強いとみて調べる。車は川越ナンバーの軽乗用車だった。
警察当局によると、男は1人で出頭してきた。「さいたま市北区の小泉毅、46歳」と名乗り、住民票を持って出頭したという。車の後部座席に血痕があった。車内にはサバイバルナイフがあり、スニーカーも持っていた。ナイフは全長約33センチ、刃渡り約20センチ。刃の部分に血のようなものがついていた。「おれが事務次官を殺した」と話している。
麹町署での事情聴取で捜査員が二つの事件について尋ねると、男は、どちらについても「自分がやった」という趣旨の供述をしているという。具体的な犯行状況の説明も含まれているという。
現場には指紋が残されていなかった。東京都中野区の事件では使っていた段ボール箱も持ち帰るなど、遺留品はこれまでのところ見つかっていない。繊維片などの採取でも、犯人につながるような物証は得られていない。
男と事件を結びつけるには、犯人しか知り得ない事実を知っているかなどにかかっており、今後、男の供述にこうした要素があるかどうか、調べていく。
警視庁は刑事部の幹部などが同署に集まった。ある捜査当局幹部は「具体的な証拠はこれからだが事件の容疑者という感触をもっている」と話した。元次官宅で相次いだ襲撃事件は、18日午前、さいたま市内で、元厚生事務次官の山口剛彦さん(66)と妻の美知子さん(61)が自宅玄関で上半身から血を流して倒れているのを、近所の人が発見。ともに胸などに、服の上から刃物で刺されたような傷があった。さらに同日午後6時半には、中野区で元次官の吉原健二さん宅に宅配便配達を装った男が侵入、妻靖子さん(72)を刺して逃走した。靖子さんは「男は年齢30〜40歳で身長165センチぐらい」と話していた。警視庁と埼玉県警は、犯行の手口などに共通点が多いことから、連続テロの可能性もあるとみていた。
●近隣でトラブルも 「小泉毅」
警視庁に出頭した男は「小泉毅」と名乗っている。住民票に書かれた住所は、さいたま市北区だった。
男が住むアパートの1階に住む男性(32)は「自分は3年ほど前に引っ越してきたが、(男は)10年ほど前に引っ越してきたと思う」と話した。22日午後6時半ごろ、男は「いらないものがあるから」と言って、アダルトDVD5枚をケースごと男性に突然渡してきた。その時は落ち着いた感じだったという。
普段は原付きバイクに乗っていたが、ここ数日はなかった。「(警視庁に出頭した際に乗っていた)テレビに出ている軽自動車に、少なくとも22日から乗って、ふらふらしていた」という。
男は短髪。男性は男について「同居の家族はいないと思う」と話した。
男性は男とは普段、あいさつはする程度という。近くの工事の騒音を巡ってトラブルになったと聞いたことがある。
男が住むアパートの隣の棟の定時制高校の男子生徒(20)は、男が郵便局員に怒鳴っているのを5、6回見たという。「きれて追い返していた。何かしそうな感じがしていたが」と話した。部屋への出入りはあまり見たことがなかったという。
近くに住む主婦は「やくざのような感じでみんな怖がっていた。働いている様子もなく、いつも家にいるようだった。けんかをして通報され、警察がきたこともあったようだ。まさかそんなことをするなんて」と驚いていた。
(2008年11月23日 朝日新聞朝刊)