現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 特集
  4. 北朝鮮関連
  5. 記事

「地上の楽園とだまされた」脱北者女性が朝鮮総連提訴

2008年6月13日13時41分

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真記者会見で涙を流す脱北者の女性=13日午前、大阪市北区、矢木隆晴撮影

 北朝鮮への帰還事業で同国に渡った後、苦痛を受けたのは「地上の楽園」とうたって事業を支援した在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の責任だとして、脱北者の女性が13日、朝鮮総連に慰謝料など約1100万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。

 訴えたのは大阪府八尾市に住む韓国籍の高政美(コ・ジョンミ)さん(47)。

 訴状によると、大阪市出身の高さん一家は1963年、「北朝鮮へ行けば心配なく生活できる」などとする朝鮮総連の宣伝を信じて帰還事業に応じ、在日朝鮮人の母親ら7人で北朝鮮へ渡った。しかし、母は早朝から夜遅くまで建設用の石集めなど過酷な労働を強いられ、養父はスパイ疑惑をかけられて拷問された。高さん自身も学校で「チョッパリ(日本人の蔑称=べっしょう)」と呼ばれ、服を脱がされるなどのいじめを受けた。

 結婚後の95年には、餓死した人の遺体処理に従事させられた。翌年、金を貸した男性が外貨稼ぎで問題を起こして連帯責任を負わされた後、2人の子どもとともに00年、脱北を試みて失敗し、強制収容施設で殴るけるの拷問を受けた。03年に中国経由で脱北に成功し、05年7月に日本に戻った。

 高さんは提訴後に記者会見し、「朝鮮総連は大うそをついてだまし、組織的な誘拐をした。責任をとるべきだ」と泣きながら訴えた。

 帰還事業をめぐっては、62年に脱北した韓国在住の男性が01年6月、朝鮮総連に損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。しかし、同地裁は民法上の債権を請求できる権利は時効(10年)で消滅したとして請求を棄却し、最高裁で確定した。今回の提訴で高さん側は、05年3月に中国にある日本の在外公館で保護された時点から起算して請求できると主張している。

 提訴後、朝鮮総連は「同じような訴えを棄却した判例がすでにある。今回の訴えは同胞社会と日朝関係に害を与える以外のなにものでもない」とのコメントを出した。

     ◇

 〈帰還事業〉 1955年結成の朝鮮総連が「北朝鮮帰国運動」の推進を決議し、「地上の楽園への人道の航路」とうたって帰還を進めた。鳩山一郎元首相ら自民、社会、共産の国会議員も超党派で「帰国協力会」を結成。59年、岸信介内閣の閣議了解で赤十字国際委員会に仲介を依頼することなどを確認して、事業が動き出した。事業終了の84年までの間、在日朝鮮人ら9万人余りが北朝鮮へ渡った。官民あげての事業を、当時の新聞報道も「国交がなくても帰りたい人を帰すべきだ」などと後押しした。

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内