テロ支援国家の指定解除の発表前夜の支援団体主催集会でも、横田早紀江さん(中央)らは懸念を表明した=25日、東京都港区
日朝間での経済制裁の一部解除の合意に続いて、米国がテロ支援国家の指定解除を発表した。北朝鮮のかたくなな態度を変えさせる「圧力」ととらえて、指定継続を求めてきた拉致被害者の家族たちは危機感を強め、政府に毅然(きぜん)とした対応を求めた。
「自分自身が生きている、私たちの子供たちがこれから生きていく日本の国がこんなに顧みられないような状況で、じれったい、何とも言えない、いらだたしさを感じます」
06年4月に訪米して、ブッシュ大統領に直接、問題解決への協力を求めた横田めぐみさん(不明当時13)の母早紀江さん(72)=川崎市=は話した。当時、大統領は「早紀江さんたち、ここに来た皆さんのことを誇りに思う。人権を尊重し、自由社会を実現させることを、私は強く保証する」と応じてくれた。
早紀江さんは今も大統領の言葉が忘れられない。「拉致は人間の命の問題。それなのに、どうにもしようがなく動いていく。国と国の問題は難しいんですかね。どんな風に言っていいのかわからない」
被害者家族の元には、前日の25日夜、米国の方針を伝えるファクスが外務省から届いた。ブッシュ大統領が福田首相との同日の電話会談で、拉致問題の解決まで日本に協力すると述べたことを説明する内容だった。
拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さん(70)は「首相は日本の立場を説明するような動きもないまま、簡単に米国の対応を容認したように見える。日本は独自に解決する自信があるのかといえば、そうも見えない。我々とは別の世界で物事が決まるむなしさを感じる。日本政府が頼りなのに……」。
欧州で拉致された有本恵子さん(当時23)の母嘉代子さん(82)=神戸市=は「今回の指定解除を受けて、日本がさらに制裁の解除を進めるのは絶対に困る」と心配した。父明弘さん(79)も「アメリカのことよりも、日本の国が強い内閣を作って北朝鮮と交渉にあたっていくことが一番大事だ」と指摘した。
日本独自の制裁や米国のテロ支援国家指定などの圧力を被害者家族が重視する背景には、北朝鮮との対話に裏切られてきた経験がある。04年には金正日総書記が徹底した再調査を約束したのに、その後、めぐみさんや松木薫さん(当時26)の遺骨として渡された骨からは別人のDNAが検出されたこともあった。
松木さんの姉、斉藤文代さん(62)=熊本県菊陽町=は「米国が決めること。今後、日本政府がどのように対応していくのか、見守りたい」。松木さん同様、よど号メンバーの妻らに拉致されたとされる石岡亨さん(当時22)の兄章さん(53)=札幌市=は「核問題も国際社会にとって重要な問題だと思うし、この間、拉致問題は解決への進展があっただろうか。楽観していないが、被害者家族としてあまり悲観的にならずに、政府の拉致問題解決への努力と事態の進展を期待している」と静かに語った。