岩手県総合防災室で、北朝鮮のミサイル発射の誤情報を確認し合う職員たち=4日午後0時25分、盛岡市、福留庸友撮影
「発射した」「いや、誤探知だ」。北朝鮮が「人工衛星」と称して「テポドン2」の改良型とみられる機体の発射準備を完了した4日、政府から一時誤った「発射情報」が流れ、関係省庁や発射後に上空を通過する可能性が高い秋田、岩手両県は混乱した。緊急時の情報伝達態勢に不安の声もあがった。
誤報は午後0時16分、テレビやネットを通じて一斉に報じられた。
地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)が配備された岩手県滝沢村。村役場に発射情報が入ると、アラーム音が鳴り響いた。村職員が庁舎に隣接する盛岡西消防署滝沢分署に電話連絡。村内120カ所に設置された防災行政無線を通じ、「北朝鮮からロケットが打ち上げられた模様です。万が一のため、テレビ、ラジオの情報にご注意下さい」との情報が流された。
まもなく、誤探知だったことが分かり、「先ほどの北朝鮮ロケット打ち上げの情報は誤報でした」とのアナウンスを村内に流した。職員は「政府が誤情報を流すんじゃ、こちらはしょうがない」。
岩手県庁でも国の緊急情報連絡システム「エムネット」のアラームが鳴った。「きました」と職員が叫び、数分後には総務省消防庁から届いたファクスを35市町村に転送した。
秋田県庁ではこれに先立つ午前10時50分ごろ、県庁に詰めていた陸上自衛隊東北方面の連絡員から「発射されました」との連絡を口頭で受け、各市町村と消防本部の166人に「発射されました」と一斉メールを送信したトラブルが起きた。1時間半後にさらに流れた誤報に、県担当者は「まさかエムネットでも」と疲れた様子で話した。
PAC3が配備されている秋田市の自衛隊施設に近い勝平小学校の運動場では、午後0時半からの練習にむけ勝平野球スポーツ少年団の児童約20人が集まっていた。
午後0時17分、NHKのニュースで速報が流れると、ラジオを聞いていた親が「避難しなさい」と指示。準備をしていた児童らは200メートル離れた体育館に向かって一斉に走り出した。しかし、5分後、誤情報だと分かると、体育館からグラウンドに戻った。川上智幸監督(41)は「何もなくてよかった。今日は避難したり、戻ったりを繰り返すのでしょうか」と話していた。 誤報は午後0時16分、首相官邸入り口の首相会見予定場所近くに待機した60人ほどの報道陣にも一斉にメールで届いた。
4分後、麻生首相が到着し、報道陣の前を何も言わず通り過ぎた。秘書官が「情報がよくわからないので確認してから対応します」と説明するうちに、「誤報」との連絡が入った。
「動きがあったときに改めて総理の会見をします」と秘書官は釈明に追われた。
東京・霞が関の水産庁では「発射は誤り」との連絡を受け、あわただしい声が飛び交った。首相官邸からの「発射」連絡を受けて、職員たちは一斉に漁業団体や都道府県などへの連絡作業に入っていたからだ。「びっくりした」と、職員の間からつぶやきが漏れた。
国土交通省も航空機に注意を促す航空情報(ノータム)を出したが、すぐに取り消した。
NHKや民放各社、朝日新聞のサイト「アサヒコム」でも政府の発表直後の午後0時17分ごろから、「政府が北朝鮮から飛翔(ひしょう)体が発射された模様と発表した」と報じた。しかし、数分後には「政府の発射情報は、誤探知だった」と訂正した。