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老朽建築、跡形なし 命運分けた「耐震性」 四川大地震

2008年5月14日9時25分

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写真全壊した古い病棟。新しい病棟(後方)などは無傷で残っていた=13日午前、四川省都江堰、樫山晃生撮影図

 【都江堰(中国四川省)=小林哲、綿陽(同省)=奥寺淳】四川大地震による犠牲者は、多くが全壊した建物の下敷きになった。被災地を歩くと、揺れに持ちこたえたビルのわきで、れんがやブロックを積み上げた古い建物が跡形もなく倒壊しているのが目立つ。命運を分けたのは何だったのか。

 被害が集中した被災地の一つ都江堰。街の中心部にある病院で、6階建ての病棟が全壊した。この病院で一番古い建物で、壁の大部分がれんが造りだった。骨組みの鉄骨もほとんどが折れ、あたりはがれきの山だ。入院患者や医療スタッフら200人以上が生き埋めになった。

 しかし、すぐそばに立つ鉄筋コンクリートの病院管理棟は、びくともしていなかった。医師は「病棟が壊れたのは古くて造りが弱かったからだ」と話す。

 商店街を歩くと、軒を並べた5、6階建ての雑居ビルやアパートが並ぶ中で、ところどころ歯が欠けたように全壊した建物がある。古いれんが造りか薄い壁の建物が多い。

 全壊した3階建ての雑居ビルでは、中の事務所にいた10人前後が生き埋めになった。3階にいて奇跡的に助かった男性(50)は「強い揺れが来て立っていられず、怖くなって机の下に潜り込んだら、すぐに天井が落ちてきてそのまま気を失ってしまった」。

 ビルは倒壊したものの、男性は机の下にできた空間のお陰で命拾いした。自力でがれきを押しのけて外に出たのは地震発生から一夜明けた13日未明。同じ部屋にいた同僚はまだ見つかっていない。

 北川チャン族自治県では、被災者の多くは山あいで暮らす少数民族だ。土壁や、れんがやブロックを積み上げた簡素な建物は、巨大地震の力にひとたまりもなかった。

 被害にあった住民の多くが「こんな地震が来るなんて」と口をそろえる。そもそも耐震性を考えた造りにはなっていないのだ。多くの家屋が山肌を縫うように立っているため、地震に伴う土砂崩れで押しつぶされた家も多い。

 一方、北川から数十キロしか離れていない綿陽の中心部はほとんどの建物がちゃんと立っていた。鉄筋構造の建物が多く、コンクリートの壁にひびは見えるが、崩れ落ちた建物は少ない。この町では漢族の住民が多く、漢族と少数民族の生活レベルの差が、被災の結果にも表れた格好だ。

     ◇

 構造設計が専門の和田章・東京工業大教授は「映像を見る限り、倒壊した建物は古い物が目立つようだ。数十年前に低い耐震性で建てられ、その後改修されないままになっていたのではないか」と話す。

 中国で建築事情を視察した経験から、「今の中国は超高層建築物も増え、建築技術は相当高い。ニュースは壊れた建物しか映さないので、すべて倒れてしまったように思いがちだが、新しい建物は大丈夫なのも多いはず」と言う。

 中国の耐震対策は、東北部を中心に24万人の死者が出た76年の唐山地震を機に見直され、地域ごとに建物の構造別の基準が設けられているという。それでも、多くの大地震を経てきた日本の基準よりは緩く、和田教授によると、「成都市の耐震基準は東京の40%程度」という。

 93年に中国を訪ねた耐震設計構造の専門家らの調査報告書には「中国には建築関係の技術者資格制度がなく、工事監理制度も不十分」と記されている。今回倒壊した建物の多くも、建築法制が未整備の時代に建てられた可能性が高いとみられる。

 和田教授は「今の中国は、猛烈な勢いで建て替えが進む一方、古いビルは取り壊すまで耐震補強しないままだ。地震に弱い」と話す。

 古いビルやマンションが立ち並ぶのは、日本の都市も同じだ。「特に分譲マンションの耐震改修はほとんど進んでいない。今回の地震は決してひとごとではない。日本も、もっと真剣に耐震に取り組むことが必要だ」と語った。(本山秀樹)

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