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渇く中国の大地、日本は水「輸入」

2008年6月10日1時3分

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地図アジアの水問題につく地図

 2カ月後に五輪を控える北京。だが、国家を挙げたプロジェクトの陰で水の確保の問題が重くのしかかる。

 北京の西150キロ、山西省大同市の冊田ダムは5年前から、「首都に貢献」のかけ声のもと、年5千万立方メートルの水を北京に送っている。河北省の四つのダムでも通常の3割増という五輪期間中の水需要を満たすため、臨時給水の準備が進む。

 おかげで北京は水に困らずに済む。だが、「周辺の水不足はますます深刻だ」と、大同を拠点に15年以上、植林や井戸掘りのNGO活動を続けている高見邦雄さん(59)は嘆く。同市中心部近くを流れる桑干河は幅が1キロにも及ぶが、「水が満足に流れているのをこの10年見ていない」。

 山西、河北両省は北京の水がめだ。桑干河も下流のダムから北京市内へと水がひかれているが、川底やダムの湖底はとうもろこしやリンゴの畑と化した。水がほとんどないのを見越し、畑のまく水にも事欠く農家が少しでも湿り気がある所をと、勝手に植えているという。

 中国の年間降水量は平均660ミリで日本の4割弱。1人当たりの水資源量も約2200立方メートルと、世界平均の4分の1程度だ。特に長江の水を呼び込む「南水北調」の2010年開通を待ち望む北京など北部は水資源は国全体の2割しかないのに人口の4割、耕地面積の6割弱を占める。都市化が進んだ北京は自前の地下水ではまかなえなくなり、周辺のダムにすがった。

 その結果、高見さんによると大同市周辺の農家の1人当たりの水の使用量は1日20リットル程度。日本人の生活用水の10分の1にすぎない。

 水不足に加えて、汚染も改善が進まない。工場排水のたれ流しや生活排水の処理施設の遅れから、黄河や長江など主な河川の半数が深刻な汚れに見舞われ、農村部は約3億人が汚染された水を飲んでいるという。河川や湖の汚染度合いの目安となる化学的酸素要求量(COD)は中国全体で800万トンが許容量とされるが、06年時点で減るどころか1400万トンを超える。

 13、14日の「環境シンポジウム」に、代表の馬軍氏が参加する中国のNGO「公衆と環境研究センター」は、数千の企業が汚染にかかわっているとしている。中国の水問題にくわしいアジア経済研究所の大塚健司研究員は05年、中国第三の大河、淮河に日本の食品会社の出資した企業が隠しパイプを使って汚水をたれ流ししている現場を見た。「税や人事で企業と密接に結びつく地方政府には取り締まりが難しい」と分析する。

 水不足と相まって農家では「汚水かんがい」が広がっている。工場排水でも、水がないよりましというのだ。

 そんな隣国の水問題を「ひとごとではない」と、バーチャルウオーター(仮想水)を研究する東京大の沖大幹教授は訴える。野菜や肉などの農作物を海外に頼る日本は、間接的にそれらの生産に必要な現地の水を使っているのに等しいとの考え方に基づく。

 日本で大豆1トンつくったと想定した場合の水の使用量は2500トン、牛肉なら2万トンとされる。日本の仮想水は年627億立方メートル。中国からも20億立方メートルの水を食べ物などの形で「輸入」しているという。

 一方、輸出した農、工業製品をつくるのに使った水を国内使用量から差し引くなどして計算した海外の研究では、日本は1年間に必要とする水の3分の2が海外からと指摘する。米国は5分の1、中国はわずか15分の1にすぎない=図参照。

 仮想水を量だけでなく、日本が輸入する農作物に使う水の汚染や、安価なプラスチック製品や衣類の生産にともなう排水の処理など質の面でとらえることも重要だ。

 国連によると、世界で12億人が安全な水が飲めず、そのうちアジア・太平洋地域が6割を占めるという。中国も今後5年で1億6千万人の飲み水確保を目標に掲げる。

 日本では、琵琶湖から流れる淀川に水源を求める下流の大阪府や兵庫県などが上流の滋賀県側に負担金を出して水源の保全や治水対策を行った「琵琶湖総合開発」が、水をめぐる上下流の協力の例として知られる。中国国内の上下流の水利権の問題や、メコン川やインダス川など国際河川の流域間の協調などにその経験を生かすことも可能だ。

 また、日本の1人当たりの水資源量は年間3300立方メートルで世界の平均の3分の1にとどまる。李志東・長岡技術科学大教授は「日本は節約や再利用など水の使い方にたけている。こうした技術を海外に広めることも世界の水問題の解決に役立つ」と話す。(森治文)

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