家屋の損壊部分を確認する判定士=17日、宮城県栗原市花山草木沢、久松弘樹撮影
岩手・宮城内陸地震の被災地で、建物の「応急危険度判定」が行われた結果、205戸が「危険」と判断されたことが朝日新聞の集計でわかった。各自治体が18日までに調査した家屋の6.5%を占める。この比率は、震度6弱以上の揺れを記録した地震と比べても小さく、揺れの割に建物被害は少ないことが裏付けられた。
この判定は、岩手県一関市、奥州市、宮城県栗原市、美里町の3169戸で実施され、一関と栗原の両市は18日までに終了した。「危険」に次ぐ「要注意」は、4市町合計で589戸(18.6%)だった。
栗原市内の約2900戸でみると、木造、鉄骨、鉄筋コンクリートとも「危険」が4〜7%台と低かった。
今回のマグニチュード(M)は7.2で、最大震度は奥州市や栗原市で6強。国内で最高の4022ガルの加速度が観測されている。日本建築防災協会のまとめでは、同じ6強を観測した鳥取県西部地震(M7.3)は10.9%、最大で6弱の福岡沖地震(M7.0)は16.4%。今回は「危険」の比率が小さいことがわかる。
◆伝統工法と軽いトタン屋根がカギ
建物には再び住めるのか、二次災害を引き起こさないか。建築士や自治体職員が連日調査を続けてきた。
栗原市の花山草木沢。築40年の2階建ての民家は家具や冷蔵庫などが倒れたが、柱が折れるといった構造自体の被害は確認されなかった。
1級建築士の千葉栄さん(63)は、土壁に露出した横板の様子から、「貫(ぬき)工法」と呼ばれる伝統工法が使われている点に注目した。穴を開けた柱と柱に横板を組む。地震でも揺れに合わせて建物全体がしなる。千葉さんは「農家が多く、伝統工法の木造家屋が多かったことが、倒壊につながらなかった原因のひとつでは」と分析した。
約20棟あるこの地域で、「危険」判定はなかった。宮城県建築士会栗原支部の高橋誠一副支部長(42)は「中越沖地震との違いは、付近に多いトタン屋根ではないか」と話す。屋根が軽いと倒壊しにくいからだ。
草木沢から北西に6キロ。あちこちで土砂崩れが起き、立ち入りが規制された花山本沢中村地区は、様相が違った。
県建築士会の白鳥淳・栗原支部長(56)が調査した11棟のうち4棟は土台から基礎が10センチ以上ずれていた。1階が納屋や車庫になっている2階建ての4棟は傾いていた。倒壊こそなかったが、「危険」が8棟。「もう住めないね」。危険を示す赤い紙が張られた家を前に、住人の夫婦はこうつぶやいたという。
◆断層周辺に家まばら 揺れの周期も影響
建物被害が少なかった理由を、専門家はどう見るか。
最初のポイントは地盤の動き方だ。地震を起こしたと見られる断層は、駒の湯温泉や、大規模崩落があった荒砥沢ダムの東側で見つかった。断層は北東から南西に延びており、西側が東側に乗り上げる形で動いたらしい。
東京大地震研究所の纐纈(こうけつ)一起教授は「被害が山側に集中したのは断層の直上だったため。(今回のような)逆断層の場合、一般的には乗り上げた地盤側の被害が大きくなる」と指摘。今回はそこに人家が少なかった。
次は地震波の特徴だ。建物には、種類や高さによって揺れやすい周期がある。特に周期1秒前後は木造住宅などに壊滅的被害を与え、「キラーパルス」とも呼ばれる。
家屋の現地調査をした東北大災害制御研究センターの源栄(もとさか)正人教授(地震工学)は「今回は周期0.5秒以下と短い地震波が多い一方、加速度が大きかった。こうした揺れは木造や低層の鉄筋コンクリートの建物を倒壊させるパワーはないことが多い」と指摘する。
東京大総合防災情報研究センターの古村孝志教授(地震学)も同様の見方だ。今回目立った0.1〜0.3秒の地震波で破壊されやすいのは、硬くてしなりにくい橋や道路だという。道路が寸断され橋も崩落したという被災地の状況とも一致する。
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応急危険度判定 二次災害を防ぐために判定士が早期に建物の安全性を判断し、「危険」は赤、「要注意」は黄、問題がなければ「調査済み」の緑の紙を張る。付近のがけの状態や隣家の瓦などの落下の恐れも判定するため「危険」がただちに「全壊」ではない。「全壊」「大規模半壊」などと自治体が判断する「罹災(りさい)証明」とは違う。