岩手・宮城内陸地震で直撃を受けた宮城県栗原市の第三セクター会社「ゆめぐり」。栗駒で運営していた温泉リゾート施設は壊れ、営業再開のめどさえ立っていない。110人の従業員は将来の不安を抱えながら、市の避難所で働いている。
「ボーナスなんて期待していない。6月分の給料も、もらえるのかどうか……」。避難所や給水所に向かうように会社から言われ、市職員の手伝いをしている従業員の男性(38)は肩を落とした。
いまの状態が、「ボランティア」なのか「業務」なのか、会社からはまったく説明がなく、分からないという。
昨年、市内に一軒家を買ったばかりで、住宅ローンを返している。子どもは2人。「それなりの収入が無ければやっていけない。仕事がどうなるか分からないまま、待っていられない」と言った。
「ゆめぐり」は市内で最大規模の「企業」。流水プールを備えた栗駒山中腹の大型宿泊施設「ハイルザーム栗駒」や、山あいの露天風呂が売りの「温湯(ぬるゆ)山荘」など四つの温泉施設を運営している。もとは各施設を別々の三セクが運営していたが、栗原市の合併で昨年4月に統合された。
5人が死亡し、2人が行方不明になっている駒の湯温泉に近い「ハイルザーム栗駒」は、屋根が崩れたり、地盤が沈下したりして大きな被害を受けた。いまは捜索にあたる警察や消防隊員らの仮眠場所になっており、駐車場はヘリポートに使われている。施設に続く道路を一般車両が通行できるようになるには、少なくとも1年以上かかるとされる。
統合前の4社の累積赤字は約1億円。「ゆめぐり」の設立にあたり、市は補助金や出資金の名目で計2億2840万円を投入して統合前の赤字を補填(ほてん)した。壊れた建物は市の所有で、修繕や建て直しの費用は市の負担になる。
試算では被害を受けた3施設の補修に10億円前後かかると見られている。一般会計予算の1.5倍にあたる500億円近くの借金を抱える市にとって、補修費をどう工面するかは大きな課題だが、佐藤勇市長は「復旧に向けていろんな道を一緒に探したい。全面的に支援する」としている。
30年間、温泉施設で働いてきた男性(57)は壁が土砂に押し流され、温泉をくみ上げるポンプが割れた施設を見て胸が詰まった。「再建の見通しが立たない会社にとって、私のような定年間際の社員は『お荷物』。経営が軌道に乗らないなら、仕事はすっぱりやめる」とつぶやいた。
「ゆめぐり」は人材派遣事業を拡大することで、従業員の雇用の維持をめざす。佐藤市長は「最低60日は今の体制を維持できる体力はある」とするが、その後の見通しは不透明だ。佐藤正則・総支配人は「市が大変な今は、災害復興を優先したい」と話している。(安田桂子)