日本人投手から「大リーグ」の舞台が遠ざかりつつある。メッツを解雇された野茂英雄投手(三〇)は一日、カブスとマイナーリーグ契約を結び、開幕メジャーの希望を絶たれた。伊良部秀輝投手(二九)=ヤンキース=は、フロリダ州タンパで行われたインディアンスとのオープン戦に先発の座確保をかけて登板したが、3回3分の2で6安打、5失点の乱調だ。スタインブレナー・オーナーの怒りを買ってトレードか、マイナー落ちの危機に陥った。吉井理人投手(三三)=メッツ=にもトレード話が絶えない。昨年まで活躍していた日本人投手にとって、一気に冬の時代がやってきた。
(ニューヨーク=山本秀明、フロリダ州タンパ=樋口太)
○契約は1カ月
一九九五年、近鉄から海を渡ってドジャース入りし、ナ・リーグ新人王に輝いた野茂投手は、しかし今年のオープン戦では4試合に登板して0勝2敗、防御率7.62と散々だった。「環境を変えることが必要」。そう言って、6勝12敗と不振だった昨年の六月にメッツへ移籍したが、三十日、開幕を迎えることなく自由契約となっていた。
もはやメジャー契約してくれるチームはなく、カブスの3Aチーム、アイオワ・カブスの選手として大リーグ復帰を目指すことになった。当面の契約期間は四月末までの一カ月間で、報酬は八千ドルだ。
四月中に大リーグ昇格を果たせば基本年俸は八十万ドルとなり、成績に応じたボーナスを含めると最高二百七十五万ドルを手にできる。しかし四月末までに昇格できなければ再び解雇され、新たな球団を探さなければならない。いわばテスト生の一カ月間といえる。
○不評のあらし
オープン戦に二番手で登板した伊良部投手には、スタンドのブーイングが襲いかかった。四球で走者を背負い、適時安打を浴びる。ボークに暴投、一塁へのゴロのときにベースカバーが遅れるミスまで飛び出した。
4点リードしていた九回、二死までたどり着きながら1点差に迫られてマウンドを降りた。観戦していたスタインブレナー・オーナーは「あいつはヤンキースの選手ではない」と語気を荒らげた。
試合後は、伊良部投手、スタインブレナー・オーナー、ドン・ジマー監督代行らの緊急会談が開かれた。チームは今後、オープン戦のためにロサンゼルスへ移動する。だが、伊良部投手は「自分の人生を考え直したい」と、フロリダに残ることを主張し、認められた。
伊良部投手は「感情を抑えろといわれ、その通りにしたら、やる気が見えないといわれる」と、首脳陣への不信感を口にした。キャッシュマン・ゼネラルマネジャーは「メジャーからはずれることも、トレードも、伊良部の可能性としては否定しない」と話した。
三十一日にはニューヨーク近郊の新聞が、ヤンキースがレッズに対して、伊良部投手と左の救援デニス・レイエス投手らとのトレードを申し込んでいた、と報じた。このトレードは成立しなかったが、両チームは今後も伊良部投手を軸にトレードを話し合っていく、という。
○不安定な投球
メッツで先発入りを目指す吉井投手の評価も、芳しくない。大リーグの“ルーキー”だった昨年は、6勝8敗のまずまずの成績を残した。しかし、三月二十四日のオリオールズとのオープン戦では、四回途中までで10安打、4失点と不安定な投球だった。
吉井投手と引き換えに、メッツはケニー・ロジャース(アスレチックス)らの獲得を目指している、と伝えられる。トレードのうわさに「次は自分か」と、吉井投手の心の中も穏やかではないだろう。