世界的な金融危機が地方自治体の財政運営にも影響を及ぼし始めた。金融市場から資金を集める地方債に買い手がつかず、東京都や大阪府などが相次いで発行中止に追い込まれているのだ。10月に発行できなかった地方債は総額1千億円。「買ったら損をしかねない」という投資家心理が、本来はリスクゼロとされる地方債市場も揺さぶっている。
「売り一色。過去に例のない極めて特殊な状況です」
東京株式市場が乱高下していた今月14日の夕方、大阪府財政課の担当者は、受話器から聞こえる証券会社の担当者の声に「やはり」と感じた。30日に発行予定だった市場公募債(満期5年)200億円の発行見送りを決め、翌日、橋下徹知事に報告した。
自治体が投資家から広く資金を集めるために発行する市場公募債。債券市場に出回ると、主に生命保険会社や投資信託会社などの機関投資家が売買し、利ざやを稼ぐ。だが、先行きの見えない金融不安で投資が手控えられ、買い手がみつからない状態だ。
9月末時点で10月に市場公募債を発行する予定を表明していた16都府県市のうち、見送ったのは大阪府のほか、東京都(10年債300億円、20年債200億円)、愛知県(5年債200億円)、川崎市(20年債100億円)。
市場公募地方債発行団体連絡協議会によると、06年9月に自治体が個別に条件を決めるようになってから、起債見送りが相次ぐのは初めてという。
「引き金をひいたのは北海道」と証券会社の売買担当者は指摘する。北海道は今月10日、5年債200億円の条件決定日を迎えた。だが、午前中に東京株式市場で日経平均株価が一時1千円以上暴落し、中堅生保の大和生命保険が破綻(はたん)。前日も不動産投資信託会社が破綻していた。
市場公募債は銀行や証券会社が自治体から購入を引き受け、債券市場で投資家に売ることで流通する。発行時の利率は入札で決まる。北海道の地方債は、28の銀行と証券会社が入札した結果、前月より0.42ポイントも高い1.70%に高騰。北海道の利払いは年間8400万円増えた計算だ。
「投資家が地方債を買わないから、各金融機関とも引き受けたくない」(証券会社関係者)。売れない地方債を無理に発行しようとしたため、金融機関がリスクを金利に上乗せし、北海道の資金調達コストを押し上げたのだ。
4都府県市は北海道の事態を受けて発行休止に。「世界の金融情勢が不安定で、条件決定ができるかわからない」(愛知県)、「投資家が買いづらくなっている」(東京都)などとしており、11月以降の対応についても市場の動向を見守る構えだ。
こうした事態に、大阪府の橋下知事は「発行総額は変わらないということで金融機関と話している。府の資金繰りは今のところ問題ないと考えている」と強調する。府は当面、資金に余裕のある別会計から繰り替えるなどして手当てするという。ただ、府の市場公募債を引き受けている新光証券の永田敏明マネジャーは「市場が好転するような明るい見通しは立てにくい」と厳しい見方を示している。(小池淳)
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■市場公募地方債 自治体が発行する地方債(借金)の一つ。現在は27都道府県と17政令指定市が発行している。引受機関の銀行や証券会社に販売し、引受機関は債券市場で投資家に販売する。市場で流通する際の利回りは国債の利回りに連動して上下するが、発行する自治体の信用度に応じて国債からの上乗せ幅(スプレッド)が変化する。信用度が低いほど幅は開く。総務省の地方債計画によると、今年度の総発行額12兆4776億円のうち、市場公募債(ミニ公募債含む)は3兆4千億円。