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角界と暴力団、根深い関係 用心棒・祝儀・後援会…

2010年6月16日7時12分

写真臨時理事会終了後、引き揚げる琴光喜関の師匠の佐渡ケ嶽親方=15日午後3時22分、東京都墨田区の国技館、山本裕之撮影

写真臨時理事会終了後、大勢の報道陣に囲まれる琴光喜関の師匠の佐渡ケ嶽親方=15日午後3時22分、東京都墨田区の国技館、山本裕之撮影

 「手間のかからない金づる」――。大相撲の大関琴光喜関らが手を染めていた野球賭博は、暴力団の資金源の一つとされる。以前は興行に直接かかわるなど、暴力団は相撲界と縁が深かったが、今はほとんど表に出ない。正体を隠したまま、力士と親密な関係を築く場合もあるという。

■商談や遊びの場

 野球賭博は「大した手間もかけず1シーズンで数億円稼げる金づる」と関東の暴力団関係者はいう。野球の盛んな広島が発祥地といい、その後全国に広がった。「角界にも顧客はいる」とこの関係者は明かす。

 そもそも大相撲は、かつて暴力団の有力な資金源のひとつだった。山口組は昭和初期から、浪曲や歌謡曲などの芸能とともに大相撲の興行に力を入れていた、と警察の内部資料にある。

 警察の取り締まりで、暴力団が直接興行を取り仕切るケースは激減したが、地方巡業などには間接的にかかわっているという。興行の期間中にトラブルが起きないよう「用心棒」役を担うなどして「力士との接点ができた」と関東の暴力団関係者は話す。

 ひいきの力士を接待して飲み食いさせ「祝儀」名目で多額の現金を渡す。力士を応援する会社経営者が居合わせることも多く「興行がカネにならなくても、接待で知り合う社長らに話を持ち掛け、カネを引っ張る算段をする」と、この関係者は明かす。

 別の暴力団関係者は「本場所は組幹部の社交場だった」と言う。ある場所の特別席は、特定暴力団幹部の「指定席」として知られていた。「維持員席」とみられるが、この関係者は「入手の経緯は知らない」と言葉を濁す。

 テレビ中継に映ることで、刑務所に服役中の仲間の組員を励ます狙いもある一方、同席する別組織の組幹部との商談や遊びの場でもある。土俵上の取組を賭けの対象にすることもあり、1回の取組で数百万円が飛び交うという。

 西日本の元暴力団幹部は「親方や力士と出身地が同じというだけで、後援会をつくる組員も多い」と明かす。カネもうけよりも自己満足で、周囲に誇りたいとの動機もあるそうだ。「こちらの身分を明かさない場合、力士側は暴力団と気づかないこともある」という。(編集委員・緒方健二)

■伝統的な資金源

 警察庁によると、野球賭博を含む賭博容疑で摘発された人は2009年は1376人で、うち暴力団員と準構成員が789人(57%)だった。賭博は覚せい剤や恐喝、競馬などの公営ギャンブルで私設の胴元となるノミ行為と並ぶ、暴力団の伝統的な資金源の一つとされる。

 野球賭博は主にプロ野球や米大リーグ、高校野球などが対象。主に西日本での摘発が多く、東日本はトランプを使うバカラ賭博が目立つという。

 賭博に単純に参加しただけならば単純賭博罪で、50万円以下の罰金や科料となるが、常習賭博罪と認定されると3年以下の懲役となる。主催者は賭博開帳図利罪が適用され、5年以下の懲役刑もある。暴力団関係者の多くは賭博開帳図利容疑で摘発されているという。(五十嵐透)

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