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〈選択のとき2〉あなたの目、法廷を生かす

2007年4月15日

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図   ※写真をクリックすると拡大します

■公判では―起訴状は疑う余地がないか

 今回は、もし裁判員に選ばれたら。裁判はどう進み、何を判断することになるのか、をみる。

 裁判員は初公判の前、裁判長から刑事裁判の鉄則について説明を受ける。「有罪か無罪かは証拠だけに基づいて判断します」などの約束事だ。

 そして、いよいよ法廷に入る。裁判官と一緒に法壇に登り、着席する。

 名前は公表されないが、顔は隠せない。「裁判公開の原則」には、裁く人がだれかがわかることも含まれるからだ。被告人の立場からすれば、だれに裁かれているのかわからないようでは「暗黒裁判」になる。

 裁判長が開廷を宣言。最初に被告人の名前などを聞き、人違いでないかどうかを確かめる。

 次に、検察官が起訴状を朗読する。起訴状は、被告人がどんな罪を犯したのか、検察官の主張を書いた紙のことだ。そして、起訴事実に対する言い分を、被告人と弁護人から聞く。

 ここはとても重要だ。起訴状に書かれていることは、普通の人なら誰も疑いを差し挟まないほどに確かか。検察官は、それを十分に証明できたか。公判の間、裁判員はそれをずっと考え続けることになるからだ。

 続いて、検察官と弁護人がそれぞれ、最初のプレゼンテーションをする。どんな証拠を使って、どのようなことを証明しようとするのか。「冒頭陳述」と呼ばれる。地図や写真を使った説明などもありそうだ。

 裁判員は、これをしっかりと頭に入れる必要がある。その後に、証人に対する尋問などがあるからだ。何を立証しようとしているかなど、全体の流れを見失わないように心がけないといけない。

 法廷には1日5〜6時間程度いることになりそうだ。普通は数日間で終わる。日当や交通費、宿泊費が支払われる。ホテルに缶詰めにされることはない。自宅で家族と法廷で起きたことを話しても、裁判について報道した新聞を読んだり、テレビを見たりしてもいい。

■協議では―裁判官の「常識」は正しいか

 裁判の場は法廷だけではない。公判の合間や公判終了後、裁判員は裁判官と一緒に別室で話し合う。これが「評議」だ。

 裁判員は自由に意見を述べる。ほかの人の意見を聞いて主張を変えるのも自由。とはいえ、いざ評議に臨むとどんな発言を求められているのか、戸惑うかもしれない。

 裁判員は、事件の真相を最初から見通す名探偵のような存在にはなれないし、ならなくていい。かといって、裁判官の言うことにうなずくだけの「お飾り」になっては、何のために参加しているのかわからなくなる。

 裁判員に期待されている重要な役割の一つは、「裁判官が当たり前だと思っていることを問い直す」ことだ。

 例えば、包丁で人を刺したとされる事件で、裁判官が「刺した場所や傷の深さなどの客観的状況から、殺意があったと考えられませんか」と発言したとする。質問の形をとってはいるが、プロの裁判官の間である種の「常識」になっている考え方を示している。

 これに対し、「なぜ、そんな常識があるのか」「今回の事件にもそのままあてはめていいのか」「私の経験だと、そんなことは一概には言えない」と問いかけ、チェックすることが裁判員には求められている。

 意見がぶつかり合い、結論を見いだしていく過程は、裁判官だけの評議でも同じだ。ただ、裁判官同士だと、意見やその背景にある「常識」のばらつきが少ない。経験や考え方が多様な素人の裁判員が評議に加われば、意見や常識も格段に幅広くなる。幅が広くなったことで、結論が普通の人にとってより納得できるものになれば理想的だ。

 評議では、裁判員の意見と裁判官の意見は同じ重みを持つ。どうしても意見が一致しなかったら、多数決で決める。ただし、裁判員、裁判官のそれぞれ1人以上が賛成していることが必要だ。

■コツは―疑問が生まれたらすぐ質問

 いま各地で開かれている「模擬裁判」は予行演習なので、評議の様子を録画するなどして後から検証することができる。

 しかし、約2年後に始まる本番だと、評議は完全な密室になる。せっかく裁判員という「外部の目」が入るのに、それがきちんと機能しているかがわからなくなる。例えば、裁判官が自分と異なる意見を抑え込んではいないかなど、検証はなかなか難しい。

 そこで、裁判員になったら、評議の内容を可能な限り、法廷という公開の場に前倒しするよう心がけるのがよさそうだ。

 といっても難しいことはない。具体的には、法廷で抱いた疑問は、その場でぶつけて解消していくことが大事だ。

 証人や被告人が言っていることが腑(ふ)に落ちなければ、質問する。検察側の論告や弁護側の締めくくりの意見(最終弁論)を聞いて、わからないことや疑問に思ったことがあった場合もすぐに質問する、といった感じだ。

 評議という密室では専門家と対等に発言しにくくても、傍聴人や報道機関が見ている法廷で、一般市民の素人代表としてなら発言しやすい。

 裁判員にとって、長時間に及ぶ法廷の審理を正確に記憶し、その内容を的確に頭の中で参照しながら評議に臨むという作業は負担が大きい。「すぐに質問」方式は、そうした負担を軽くする効果もある。

 模擬裁判でも、裁判長が裁判員に「わからない点があったら質問してください」と促し、「クエスチョンタイム」をとって自由に質問してもらう運用が広がっている。

 裁判員が有罪と無罪のどちらに傾いているかが、判決前に事実上わかることへの抵抗感もある。しかし、検察側や弁護側にとっては法廷で示してもらったほうが軌道修正する機会を与えられるメリットもある。

 こうして、法廷がいわば「公開討論会」化していくことになれば、「見えない過程」が小さくなっていくことになる。

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