現在位置:asahi.com>ニュース特集>裁判員制度> 記事 〈裁判員時代〉何の罪?判断市民に2007年11月14日 09年春に始まる裁判員制度に参加する市民は、有罪か無罪かを見極め、刑の重さを決めるだけでなく、被告の行為がどんな罪に当たるかを判断する「法令の適用」も担うことになる。東京地裁で、法令の適用を市民と裁判官が一緒に考える模擬「評議」が開かれた。強盗致傷罪が成立するのか、それとも恐喝罪と傷害罪の「併合罪」なのか。同じ審理を基にしても、グループごとに別の結果が出た。 12日の模擬評議で扱われたのはこんなケースだ。 酔った男が深夜の路上で男性を数回殴り、「金を出せ」と脅して1万円を奪った事実には争いはない。検察は強盗致傷罪で起訴。ただ、被害者は「首を絞められたうえに『金を出さんと殺すぞ』と言われた」と主張し、被告は「首を絞めていないし『殺すぞ』とも言っていない。殴ったのは金を奪うためでなく、じろじろ見られて腹が立っただけだ」と訴えた――。 法廷での審理を描いたドラマのDVDを見た後、9人の裁判員が2グループに分かれ、裁判官とともに話し合った。 強盗致傷罪は一般に「金を奪うために、相手が抵抗できないほどの脅迫や暴行をしてけがをさせた」ときに成立する。暴行や脅迫がそれほど強くなければ恐喝罪で、けがをさせても金を奪う意思がないと傷害罪にとどまる。強盗致傷罪より法定刑が軽くなることから「実際の強盗事件の裁判でも争われることが極めて多いケース」(最高裁刑事局)だ。 Aグループの評議では「被害者の方が冷静で、よく覚えているはず。一連の流れで考えれば強盗だ」という男性裁判員がいる一方で、「体格は2人ともほぼ同じ。反抗できなかったとはいえないのでは」という女性裁判員も。どの時点で「金を奪う意思」が生じたのか悩んだ末に、「恐喝罪と傷害罪の併合罪」という被告に有利な意見が多数となった。 Bグループでも「被告は金に困っていなかった」「計画的なら凶器を用意するはず」などと、強盗の意図は当初はなかったという意見が相次いだ。しかし、被告が被害者に「謝れ」と一度も言わずに金を要求した事実を裁判官が指摘すると、「強盗の意図がないとすると確かに飛躍しすぎだ」とする意見で一致。被害者の証言を信用して「被告は『出さんと殺すぞ』と言って首を絞めた」とし、強盗致傷罪に当たると結論づけた。 適用した罪は異なったが、示談が成立していることもあり、量刑は両グループとも執行猶予付きの判決で一致した。 終了後、介護ヘルパーの50代の女性は「ふだん接していない問題なので、難しかった」と感想を話した。 メーカー勤務の男性(30)は「裁判官が私たちの議論を軌道修正する役割に徹したので好きなことが言えた。でも、裁判官が発言しすぎると市民が引っ張られて頼りにしてしまうのではないか」と指摘した。 ■「法令の適用」巡る事件例 ●検察側の殺人罪での起訴に、弁護側が「殺害の故意はなく傷害の結果死んでしまった」と傷害致死罪を主張 ●強盗殺人罪での起訴に対し、弁護側が「殺害の故意はなかった」と強盗致死罪を主張 ●危険運転致死罪での起訴に対し、弁護側が「故意がなかった」と自動車運転過失致死罪を主張 ●現住建造物等放火罪での起訴に、弁護側が「人が中にいると思わなかった」と非現住建造物等放火罪を主張 PR情報この記事の関連情報 |