現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 特集
  4. 裁判員制度
  5. 記事

離島へき地、遠い法廷 飛行機1日1便、前日から宿泊も

2008年1月29日

印刷

ソーシャルブックマーク

 裁判員の候補者に選ばれても、裁判所に行くのが大変……。離島などに住む人から裁判員制度への負担感を訴える声が上がっている。裁判所側は必要な旅費や宿泊費をしっかり支給する考えだが、柔軟に辞退を認めざるを得ないケースも出てきそうだ。

 有権者ならば、全国どこに住んでいても裁判員に選ばれる可能性がある。裁判員裁判は各地の裁判所のうち、都道府県庁所在地(北海道は4カ所)の地裁本庁と人口が多い地域の支部の計60カ所で実施するため、遠距離移動を強いる例も出てくる。

■大雪に足止め

 日本の面積の2割を占める北海道。札幌、旭川、函館、釧路と四つの地裁があるが、各管内の広さはいくつかの都府県分に相当する。

 日高地方の南端・襟裳岬で有名なえりも町。裁判員裁判が行われる札幌地裁は約200キロ離れている。直行の高速バスは1日1本。午前5時半発でJR札幌駅前に着くのは同9時15分。地裁で午前10時から予定される選任手続きに間に合うかどうか、微妙だ。

 地裁は「午前9時半には集まってもらいたいところだが……」。隣町の様似町に出て午前6時過ぎの始発列車に乗っても札幌駅着は午前9時59分で、間に合わない。地裁は裁判前日や終了日に札幌での宿泊を幅広く認める考えだ。

 有数の豪雪地帯を管内にもつ北部の旭川地裁。冬場は大雪による列車の運休も珍しくなく、弁護士が足止めされて裁判が延期になったこともある。地裁内では「冬場は裁判所に来るのが物理的に不可能なこともある」と心配する声が上がっている。

■島からは590キロ

 「牛の世話で目が離せない。1週間近くも不在になるのは困る」。鹿児島県最南端の与論島。昨年5月に鹿児島地裁が開いた説明会で、畜産業の男性が声を上げた。

 奄美諸島の住民が候補者に選ばれると、向かうのは鹿児島市内の地裁本庁舎。与論島から約590キロの距離がある。

 与論空港から鹿児島空港(霧島市)への空の便は1日1便。裁判員の選任手続きで午前中に地裁に行く場合、前夜に本土で宿泊しなければならない。

 地裁が与論島民約50人にとったアンケート(複数回答)では、裁判員になることに消極的な23人のうち、15人が「本土の地裁までの移動が大変」「往復にかかる数日間の日程調整が大変」を理由に挙げた。

■体力的に問題

 4町村に約2万3千人が暮らす島根県の隠岐諸島。松江地裁は昨年11月、隠岐の島町で初めて説明会を開いた。「当日、天候不良で船が欠航して出席できなかったら、罰則はあるのか」といった質問が出た。本土への足は高速船とフェリー。高速船は12〜2月は休航。頼みのフェリーも昨冬はこの期間に3日間、今冬も昨年暮れに2日間、しけで欠航した。

 島根県は都道府県別の高齢化率が全国1位。離島だけでなく、県西部や山間部では、地裁本庁舎まで5時間以上かかる場所も。70歳以上なら辞退は認められるが、70歳未満でも「移動が体力的にきつい」と辞退を申し出るケースも想定される。

 「認めるかどうか、個々に判断するしかない」と地裁。移動手段は原則として公共交通機関となっているが、「『自家用車しか手段がない』と申し出があれば考慮せざるをえない」としている。

■キーワード

 〈「遠距離」候補者の辞退〉 法や政令は、裁判員になることで「著しい損害」や「重大な不利益」が生じると認められる場合は裁判所の判断で辞退を認める。単に「遠い」「面倒だ」という理由では認められないとみられるが、遠方から来る場合、近くに住む人よりは柔軟に辞退が認められそうだ。

 呼び出しに応じた人には移動日を含めた日当(上限1万円)のほか、鉄道(片道100キロ以上なら特急料金も)、船、航空の交通費を支給。車の場合、1キロの移動につき37円を支払う。必要ならば7800〜8700円の宿泊費も出る。

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内