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韓国「市民が参加」間近 試行、日本関係者も注目

2008年01月30日

 韓国で市民が初めて裁判に参加する「国民参与裁判制度」が今年から施行され、初めての裁判が2月12日に南東部の大邱地裁で開かれる。市民が評議して有罪・無罪を決める「陪審制」と、裁判官と市民が協働する「参審制」を組み合わせたもので、2年間試行した後、再検討して12年に最終的な形を決める。09年から裁判員制度を始める日本の関係者は、先行する韓国の新制度がどのように進むか、注目している。

 国民参与裁判は「裁判の民主化」を唱えた盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の意向も働き、昨年4月末の立法からわずか1年足らずでの実施になった。

 殺人や強盗などの重大犯罪を巡る刑事裁判の一審が対象▽裁判に参加する人が国民から無作為で選ばれる――といった点は日本の裁判員制度と似ている。一方、評議は陪審員だけで始めるが、全員一致にならなかったら裁判官が加わる▽評決は陪審員だけで出し、裁判官はその評決と違う判決を言い渡すことができる――など、流れはかなり異なる。被告が、国民参与裁判か、裁判官だけによる裁判かを選択できるのも日本の裁判員制度と違う点だ。

 ●出席意思1割

 韓国最高裁によると、対象になる裁判件数は年間4千〜5千件。「被告は恥ずかしさから、市民の参加を望まないだろう」との見方が強く、実際に開かれる国民参与裁判は100〜200件程度と予想している。

 また、準備期間が1年にも満たず、国民参与裁判を十分に理解している韓国人は少ない。昨年秋には、全国18カ所の裁判所で模擬裁判を実施。無作為に選んだ市民9千人に参加を呼びかけたが、出席の意思を示したのは10%程度だったという。

 昨年12月からテレビなどで広報を始めたところ、参加意思を持つ国民の数は15〜20%に上昇。韓国最高裁の関係者は「30〜40%ぐらいには高めたい」と言うが「潤沢な広報予算がある日本がうらやましい」とも語る。

 ●信頼回復狙う

 陪審員の評決に判決への拘束力がないこともあって、専門家の間には「既存の制度と変わらない可能性がある。国民の裁判参加意識が高まるのか疑問」という声もある。

 これについて韓国最高裁の関係者は「試験的な制度である以上、こうした事情はある程度やむを得ない」と説明する。新制度を固めるのは12年になるが、「今の段階で大きく制度をいじるわけにはいかない」というわけだ。

 もともと、韓国で「軍事政権時代に司法も政治の影響を受けた」と考える人は多い。最高裁関係者も「市民の司法への信頼を回復するのが目的のひとつ」と語る。こうした問題意識を受け、自らを「国民参与政府」と名付けた盧政権が議論を急ピッチで進めてきた。

 戦前に15年間、陪審制が実施されていた日本と異なり、韓国には国民参加型の裁判の経験が全くない。延世大学法学部の韓尚勲・副教授は「参審制には『司法の安定』、陪審制には『より深い市民参加』という長所がそれぞれある。国民参与裁判が始まれば、国民の関心も高まる。裁判のデータを集めて議論すれば、韓国に最も適した独自の裁判制度が導入できるはずだ」と語った。

 ●「協力度みる」

 「国民参与裁判」で呼び出された人のうちどの程度が裁判所に足を運ぶか、候補者から選ぶ手続きの中でどんな問題が実際に起きるか――。韓国での新たな取り組みに日本の最高裁の関係者は関心を寄せる。日本で裁判員制度が始まった際の対応に役立つことがあるのではないかとみている。

 法務省は必要に応じて現地から情報を集めてきた。「国情も制度の設計も違う」とみる向きもあるが、ある幹部は「実際に始まった段階で、市民がどの程度参加に協力してくれるのかは未知数。そのあたりについてよくみたい」と話している。

 ■韓国「国民参与裁判制度」の概要■

〈対象事件〉

・殺人や強盗など量刑の重い刑事裁判(一審のみ)で、かつ被告が同制度の適用を望んだ場合

〈陪審員の資格と選定〉

・満20歳以上の韓国国民から無作為に選定

・地方裁があらかじめ陪審員候補予定者名簿を作成し、事件ごとに選定

・法律や裁判所が認めた理由以外で出席を拒否した場合は、200万ウォン(約23万円)以下の罰金

・陪審員が、所属する会社などから不利益を受けることを禁じる保護措置を法律に明記

〈陪審員の構成と権限〉

・陪審員は法定刑の軽重などによって、5人、7人、9人で構成

・評決は裁判官から独立して行い、満場一致で有罪か無罪かを決定

・意見が割れた場合は裁判官と協議の上、多数決で決定

・判決は、陪審員の評決に影響されない。評決と異なる判決の場合は、必ずその理由を判決書に明記

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