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手話通訳士、どう確保 「障害で排除しないで」

2008年11月19日

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写真模擬裁判の評議で裁判員役を務める聴覚障害者(手前)。左奥は手話通訳士=7月18日、東京地裁、代表撮影

 来年5月に始まる裁判員制度に不安な思いで向き合っているのが、弁論や証言を直接聞くことができない聴覚障害者だ。手話通訳士の数は少なく、法廷では難解な専門用語が飛び交う。地域で登録数に格差がある手話通訳士をどう確保するか、法廷通訳の研修など解決すべき課題は多い。(増田啓佑)

 10月16日。全日本ろうあ連盟の安藤豊喜理事長(71)は最高裁判所と法務省に要望書を提出した。聴覚障害者のコミュニケーション方法は手話や補聴器、要約筆記など個々の状況で異なる。要望は、本人の希望の手段を選べる▽厚生労働省認定の資格を持つ手話通訳士を基本にした派遣システムの整備▽情報を得やすくするために継続した期間、同じ通訳士が担当する、ことなどを求めている。

 厚労省の06年調査では全国の聴覚障害者は約28万人。だが、聴力障害者情報文化センターによると、今月14日現在、手話通訳士の登録者は全国に2014人と少ない。地域による差も大きく、最多は東京の452人で、最少は佐賀の1人、次に少ない福井は6人しかいない。

 福井県聴力障害者福祉協会の手話通訳士・石田稔さん(52)は「1人が集中して通訳できるのは20分が限界で、1日がかりの裁判だと4人は必要」と話す。裁判員裁判は全体の約7割が3日連続の審理、評議を想定している。手話通訳士のほとんどが会社員など別の仕事をしており、必要な人数を確保するのは難しい。

 東京地裁で7月にあった裁判員制度の模擬裁判に全国で初めて聴覚障害者が参加した。国立障害者リハビリテーションセンター学院教官の木村晴美さん(43)。手話通訳士1人と、同学院の学生2人が交代で補佐した。だが、弁護人の口調が速く、学生が担当した時に手話が追いつかないことがあった。木村さんは「手話通訳士が普段使わない専門用語も多く、法廷通訳のための研修制度も作ってほしい」と話す。

 一つの事件で最大100人が裁判員の候補者となり、書類審査や面接で6人が選ばれる。最高裁広報課は「事前に要望があった場合は選任手続きの段階から手話通訳士、要約筆記者を手配し、不自由がないようにしたい」としている。だが、証拠の録音テープなどに入った物音や言葉遣いが審理で重要になる特殊な事件では、聴覚障害者が裁判員に選ばれないことがあるかもしれないという。

 安藤理事長は「障害を理由に私たちが裁判員を断られることがないよう配慮してほしい」と訴えている。

○模擬裁判で検証を

 <渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話> 裁判員の選任手続きでは、検察側と弁護側は理由を公にせずに候補者について選ばれないよう求めることができる。障害を理由にした排除であれば不当な差別だ。障害者が参加した場合はどのような点に配慮するべきか、模擬裁判で検証し障害に関係なく誰もが参加できる制度を整える必要がある。

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