現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 特集
  4. 裁判員制度
  5. 記事

検察審査会「起訴相当」2回で起訴へ 議決に法的拘束力

2009年5月19日7時2分

 裁判員制度が始まる21日、市民がすでに参加している「検察審査会」の仕組みも変わる。検察官が「不起訴」と判断して裁判にかけなかった事件でも、検察審査会が「起訴相当」と2回議決すれば強制的に容疑者が起訴されるように改められる。これまで起訴の権限は検察官が独占してきたが、民意で起訴できるようになるのは初めてのことだ。

 検察審査会は戦後60年余にわたって続いており、刑事司法への市民参加としては裁判員制度の「先輩格」。地裁や地裁支部を拠点として全国に165の審査会がある。くじで選ばれた市民11人が半年の任期で検察官が不起訴処分とした事件を審査。不起訴が妥当なら「不起訴相当」、起訴しなかったことが不適当ならば「不起訴不当」か「起訴相当」と議決する。

 ただ、議決に法的な拘束力はなかった。近年は年間2千件以上を扱い、「起訴相当」は多くて十数件程度。それらは、検察官が再捜査をした結果、不起訴が維持されるケースが少なくなかった。

 兵庫県明石市の花火大会での歩道橋事故をめぐり業務上過失致死傷の容疑で捜査された当時の警察署長や、日本歯科医師連盟からの献金をめぐって政治資金規正法違反の容疑で捜査された山崎拓・元自民党副総裁らについて、検察審査会は「起訴相当」としたが検察側は起訴しなかった。

 最終的には検察官の裁量で起訴するかを決める仕組みの見直しを唱えたのは、01年に裁判員制度の導入を打ち出した政府の司法制度改革審議会だった。検察審査会の一定の議決に法的な拘束力を与えて民意を反映することを提言。検察審査会法が改正された。

 新しい制度では、今月21日以降に審査会が「起訴相当」の議決を出した場合には、検察官はその事件を再捜査し、3カ月以内に起訴するかどうかを判断しなければならない。起訴しなかった場合は再び審査会が審査。改めて「起訴相当」を議決した場合は、容疑者は必ず起訴される。

 起訴状を書いたり、その後の公判で立証したりする仕事は、検察官ではなく、裁判所が指定した弁護士が担う。捜査で得られた証拠や資料は検察官から引き継ぐ。

 あわせて、検察審査会に「審査補助員」として弁護士が立ち会い、法的なアドバイスをする仕組みも新たに設けられた。日本弁護士連合会で審査会向けの研修を担当する山下幸夫弁護士は「弁護士の役割に期待した改正といえる。検察審査会が少しでも活発に使われるように、一役買いたい」と話す。

 法曹関係者の間では、審査の申し立てが増えるという見方が強い。検察審査員の経験者2万人が加入する「全国検察審査協会連合会」の高野武会長(77)は「2回も市民が考えた末の結論であれば、市民感覚としては起訴で間違いない。被害者など審査を申し立てる側にとっては心強い改正だと思う」と評価している。(岩田清隆)

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内