2009年9月2日15時4分

全国で3例目となる裁判員裁判が2日午前、青森地裁で開廷した。性犯罪を対象とした初めての裁判員裁判。被害者の名前を匿名で呼び、法廷の大型モニターに映す情報を最小限にとどめるなど、被害者に配慮した法廷となった。
午前10時に開廷。法壇に並んだ6人の裁判員は男性が5人、女性が1人という構成だった。小川賢司裁判長は冒頭、被告に対して「被害者の名前を口にするようなことは絶対にしないで下さい」と注意した。検察官が起訴状を読む間、裁判員らは配られた資料をボールペンで追った。
青森県在住の無職田嶋靖広被告(22)は、(1)06年7月に県内の女性宅に侵入して女性に乱暴して現金1万4千円を奪い、けがをさせた(2)今年1月にも県内の別の女性宅に侵入して現金4万8千円余を奪い、乱暴してけがを負わせた――などとして、2件の強盗強姦(ごうかん)と窃盗、窃盗未遂の計4件で起訴された。
検察側は起訴状のなかで、強盗強姦の被害者2人を「Aさん」「Bさん」と呼んだ。罪状認否で、被告は「間違いないですね」と述べ、起訴内容をすべて認めた。
裁判員裁判では、書面中心の裁判から「見て聞いただけで分かる裁判」への転換が図られている。これまで2件あった裁判員裁判では、裁判員だけでなく、傍聴人も含めて理解できるように、検察官と弁護人の背後に設置された大型モニターに、事件の構図のチャートや現場の見取り図、写真などが大きく映された。
しかし、今回は被害者のプライバシーに配慮。検察官は冒頭陳述を述べる際、被告が高校を卒業してから事件を起こすまでの職歴や借金の状況などを大型モニターとパネルの形で示しただけで、被害者に関する情報は傍聴席に向けては一切示さなかった。
一方で、裁判官と裁判員に対しては、四つの事件の内容について書かれた資料を配布した。強盗強姦事件で被告が犯行直前に被害者と交わしたやりとりの内容については、読み上げたり画面に示したりはせず、「お手元の資料をご覧下さい」と呼びかけた。
資料に目を走らせた裁判員は、一様に厳しい表情に。女性裁判員は、口元を引き締めた表情で被告を見つめ、検察官の言葉にうなずいていた。
証拠調べの手続きに入ると、検察官は「できるだけ長く刑務所に入れる厳しい処罰を」とする被害者の供述調書を読み上げた。犯行の一部については朗読が省略され、検察官が「後ほど写しをお配りします」と説明した。大型モニターには証拠の一覧表が映されたが、その後、検察官が「被害者のプライバシーに配慮するため、電源を切ってください」と求め、何も映されなくなった。犯行の様子を再現した写真や被害者の部屋の見取り図などは、裁判員の手元の小型モニターに映し出された。一目見たあとに目をつむり考え込む裁判員もいた。
2日午後は被告人質問が始まる。3日午後には被害者が「ビデオリンク方式」により、別室から意見を述べたうえで結審。4日午後に判決が言い渡される予定だ。(石川瀬里、有近隆史)