海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」と漁船清徳丸の衝突事故で、行方不明になっている千葉県勝浦市の吉清治夫さん(58)と哲大さん(23)の自宅を2日、福田首相が訪れた。親族ら約10人は約25分間、居間で首相と向き合った。
「こんにちは、福田です」
午前9時7分。引き戸が開く音がすると、玄関から低い声が聞こえた。居間にあがってきたのは首相1人だった。事故後、家には妻が1人残り、親族が交代で励ましに来ているが、この日は哲大さんの妹や治夫さんのきょうだいも集まった。治夫さんが好きだった日本酒が、首相から渡された。
「とんだことをしてしまって……」。正座した福田首相はそうわびて再発防止を誓った後、普段の父子について尋ねた。「哲大はやさしく、いろんなことに気が回る子。好かれていましたよ」。僚船・康栄丸の船長で、治夫さんのいとこの中ノ谷義敬さん(63)が答えた。
親族らは隣の部屋に、額縁に入れた清徳丸の大きな写真と父と子の写真を並べて置いていた。
「見せてもらっていいですか」
親族がうなずくと、首相は写真に近寄り、仰ぎ見て手をあわせた。約2分間。向き直った福田首相は「2人の長い人生を……申し訳ない」と、目を赤くして語った。
「何か困ったら、言ってください」「よろしくお願いします」
そんなやりとりの後で首相は、治夫さんの妻とも握手をして外へ。中ノ谷さんは胸ポケットから出した手紙を渡した。
手紙は自衛隊員への指導の徹底を求めた内容。「この事故を知り、私たちに会いに来た方が指導、対策を徹底させてほしい、という思いを伝えた」と中ノ谷さんは語った。