千葉・房総半島沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸が衝突した事故で、第3管区海上保安本部は主な原因はあたご側にあったとみて、衝突時に当直士官だった水雷長の3等海佐(34)を業務上過失往来危険容疑で来月中にも横浜地検に書類送致する方向で最終的な検討に入った。漁船側にも一部過失があるとみて、立件を検討。あたごの見張り員ら他の当直員の過失の有無も捜査の焦点だが、仮眠中だった艦長については直接的な事故への関与が薄いとして、同容疑での立件は見送られる公算が大きくなっている。
事故が起きたのは2月19日。3管は連日、乗組員からの事情聴取や、船体・機器類の鑑定や分析を進めている。これまでの調べでは、清徳丸があたごの針路上を右から左に横切る位置関係だったことがわかっている。この場合、海上衝突予防法では右舷側に相手を見ていたあたごに、右にかじを切るなどの衝突回避義務がある。3管はこれを怠ったあたごに一義的な原因があるとみている。
特に当直士官は当直態勢での航行の責任者。危険を回避するよう指揮する義務があり、刑事責任の追及は不可避とみている。これに対し艦長は、衝突時には仮眠中で回避措置を命じられる状況になく、同容疑での責任追及は難しいという。見張りやレーダー員については、それぞれの職務に照らして過失がなかったかどうか、慎重に判断する方針だ。
一方、清徳丸についても、周囲の僚船が危険を回避する中であたごと衝突していることなどから、衝突を避ける「協力動作」が十分でなかった疑いが浮上。乗っていた吉清(きちせい)治夫さんと長男哲大(てつひろ)さんは依然として行方が分からず、どちらが操舵(そうだ)していたかも不明なため、当事者を特定しないまま、同容疑などでの立件を模索している。
今回の事故は一方の当事者が行方不明であることに加え、第三者による目撃情報もない。清徳丸の全地球測位システム(GPS)は海水につかって解読が難航していることなどから、細部の事実認定に時間がかかっている。関係者の記憶や供述にもずれがあり、あたごを現場海域で航行させて行う予定の実況見分も行われていない。