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ロス事件、突然の幕引き 三浦元社長、移送前は「闘う」

2008年10月12日3時0分

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写真10日、ロサンゼルス空港に到着し、車で移送される三浦和義元社長(中央)。左はロス市警のジャクソン捜査官=代表撮影

写真三浦一美さんが銃撃されたロサンゼルス市内ノース・フリーモント通りの現場=88年5月

 米ロサンゼルスで10日(日本時間11日)、三浦和義元社長(61)が自ら命を絶った。81年の事件当時、妻だった一美さん(28)の死をめぐり、ワイドショーや週刊誌などで大きく取り上げられた「ロス疑惑」。日本で無罪を勝ち取り、米でも徹底的に争う姿勢を見せていた元社長に何があったのか。日米の捜査当局が続けた「真相解明」は、事件発生から27年で決着を見ないまま幕引きとなった。

 「僕の知る状況からは、自殺はあり得ない。ロスが大好きだったキザな男。着いて半日で死ぬだろうか」。三浦元社長と約2年間、ロス疑惑の経験などを題材にトークショーを開いてきた放送作家の河村シゲルさん(65)は、驚きを隠さなかった。

 サイパン勾留(こうりゅう)中の元社長がロスへの身柄移送を阻止するために、連邦地裁に申し立てた人身保護請求を一転して取り下げ、移送に同意したのは9月29日。元社長の妻から、その2日前にも元社長は「闘う」と語っていたと聞かされていたからだ。

 河村さん自身も同月中旬には、元社長と直接、電話で話した。弁護士費用を賄うために、ショーの内容をまとめ、近く出版予定だった書籍の構成などを相談した。その時は、変わった様子を感じなかったが、当時すでに、関係者との自由な電話接見が制限されていたという。河村さんの手元に最近、届いた手記のタイトルは「サイパンズー(サイパンの動物園)にて」。拘束時の様子や励ましてくれた人への感謝の言葉が、400字詰め原稿用紙で約5枚分つづられていたという。

 保釈請求や移送手続きの取り消し、逮捕状無効の申し立てに人身保護請求――。元社長はサイパンやロスの裁判所で、逮捕・勾留の不当さを訴え続けた。

 映画監督の山際永三さんが4月、サイパンで元社長に接見した時も、「ロスで新たに闘う」と話していたという。「今は信じられない。三浦さんは日本から見捨てられ、国と国の間に落ちた。もし自殺なら、日米二つの国によって殺されたようなものだ」

 神奈川県平塚市の郊外にある三浦元社長の自宅では、親族とみられる数人があわただしく出入りしたが、報道陣の問いかけには無言だった。

 11日午後8時半、報道陣の求めに親族の男性からコメントの紙が出された。「このたび、三浦和義がロスで亡くなったとの知らせを領事館より受けました。拘束中、なぜこのような事態になったのか、悲しみとともに、遺憾に感じております」などと書かれていた。

 今月10日にロスに向かう直前、弁護士には「カリフォルニアに行く準備はできた。闘い続ける」と語っていた。

■捜査関係者 真相期待したが…

 銃撃事件の捜査は日米が協力して実施していた。両国の当局関係者は自殺の一報に驚き、悔しさをにじませた。

 88年に三浦元社長を逮捕した当時の警視庁捜査1課長だった坂口勉さん(73)は「事件の真実が米国の裁判で明らかになればと期待していたが、これですべてがだめになってしまった」と残念がった。

 当時、同課管理官として捜査を指揮した寺尾正大さん(66)は、生い立ちや職歴など元社長がどんな人物かについて徹底的に調べたという自負がある。「自殺は彼らしくない。そういう行動を取る人物ではないはず。わからない」と繰り返した。

 日米の捜査当局は、有罪立証に向け、水面下で裁判記録を調べるなどの協力を続けてきたとみられる。法務省の幹部は「米国と連絡を取り合ってここまで来たのに、すべてが無になった」と、突然の幕切れに悔しさをにじませた。

 日本での一、二審の公判に検事として立ち会った元最高検公判部長の山田弘司さん(62)は「日本での無罪判決に、釈然としない思いの人がいるのも事実。もう一度、実質的に審理されれば、有罪、無罪の結論はどうだろうと、理由が示されて、納得する人も、もう少し多くなるだろうと思っていた」。

 銃撃事件発生当時のロス地検の担当検事だったルイス・イトウさんは、何度も「ショックだ」と話した。サイパンでの逮捕後に捜査に復帰していた。「一事不再理など、法律上難しい問題もあったが、ヤマを乗り越えて公判に持ち込めば、真実を明らかにできるというのがこちらの考えだった」

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