現在位置:asahi.com>ニュース特集>チベット問題> 記事 騒乱拡大、五輪に暗雲 89年以来の規模 チベット2008年03月15日10時10分 「チベットの安全は全国の安全にかかわる」――。中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席がこう明言した8日後の14日、チベット自治区ラサの騒乱は89年の戒厳令以来の規模に広がった。北京五輪を8月に控え、流血の事態が拡大すれば国際社会の批判が高まるのは必至。胡主席と因縁の深いチベット問題をめぐり、中国指導部は難しい対応を迫られる。 日中関係筋によると、同自治区内では、在留邦人は約30人おり、いずれも無事が確認されたという。在京チベット関係者によると、市内のチベット仏教の三大寺院の一つを約2千人の治安当局が取り囲んでいる。自治区以外でチベット人が多数住む四川、雲南、青海、甘粛の各省でも、数日前からチベット人僧侶のデモが散発的に起きており、抗議行動は広がりを見せている。 ラサ市内では、14日午後に入って「戒厳令が敷かれるのではないか」とのうわさが流れ始めているという。香港のテレビ局TVBが同日夜、ラサからの情報として肉声を交えて伝えた。市内のホテル従業員によると、大昭寺をはじめ主要な寺院は閉鎖され、商店も休業した。 89年の騒乱で広がった混乱を収拾するため戒厳令を敷いた際、チベット自治区トップの党委書記として鎮圧の先頭に立ったのが、現在の胡主席だった。この行動が故トウ小平氏ら当時の指導部に評価され、若くして異例といえる最高指導部の政治局常務委員に抜擢(ばってき)されたとの逸話も残る。 逆にラサでは、庶民の間で胡主席の評判が芳しくないのも現実だ。 胡主席は6日、北京で開催中の全国人民代表大会(全人代)のチベット自治区代表団の分科会にみずから出席。「チベットの安全は全国の安全にかかわる」と述べ、チベットの安定を維持する必要性を明言した。 しかし、その数日後にデモが発生。さらに拡大したことで胡主席はメンツを失った形だ。 胡指導部は「和諧(わかい)(調和のとれた)社会」の実現をスローガンに掲げ、貧富の格差の解消や教育の機会の平等、幹部に横行する腐敗の一掃などに取り組んできた。 しかし、チベット問題では強硬路線を堅持。ドイツのメルケル首相が昨年9月にダライ・ラマ14世と会見すると、猛反発。中独外相会談を急きょキャンセルするなど態度を硬化させた。 59年のチベット動乱から49年となる今回も89年と同様、武装警察が出動した。しかし、今回は「平和の祭典」である北京五輪が目前に迫っている。流血の惨事が繰り返されれば、中国にとってのダメージは計り知れない。国際社会の人権批判に火をつけ、ボイコットの声が高まることも予想される。 PR情報 |