送検のため行徳署を出る市橋達也容疑者=11月12日
千葉県市川市でリンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22)の遺体が見つかった事件で、市橋達也容疑者(30)が殺人などの容疑で2日、再逮捕された。県警は強姦(ごうかん)致死を逮捕容疑に加え、動機が性的暴行だったことをうかがわせた。2年7カ月に及ぶ逃走の末、発見された市橋容疑者は黙秘を続けており、弁護側も慎重な姿勢だ。
県警は午後6時半から、千葉県市川市の行徳署で記者会見した。
県警によると、千葉刑務所(千葉市)の拘置施設で再逮捕を知らされた市橋容疑者は「はい、分かりました」と小さい声で応じたが、容疑については、無言のまま何も話さなかったという。
殺人と強姦致死の二つの容疑で立件した理由について、中村修一捜査1課長は「現場周辺の聞き込み、現場の鑑識などの捜査を積み上げた結果だ」としたうえで、「殺害が、性的暴行と密接して行われたと判断した」と説明した。
捜査関係者によると、ホーカーさんの遺体から採取した体液のDNA型が市橋容疑者のものと一致しているが、市橋容疑者がホーカーさんを殺害したことを直接裏付ける証拠とはいえず、県警は、性的暴行と殺害が一連の行為であったことを複数の状況証拠で裏付けようとしている。
県警は、英国に住むリンゼイさんの両親ら遺族にも、被害者対策を担当する現地の警察官を通じて、メールで再逮捕を知らせたという。
一方、市橋容疑者は、11月10日に死体遺棄容疑で逮捕されてから約2週間は水やお茶を飲むだけで食事はとらず、調べにも黙秘し続けた。
死体遺棄容疑で逮捕された直後から、千葉県弁護士会の刑事弁護センターは私選の弁護団を結成。ほぼ毎日接見をしている。
最初の接見は逮捕翌日の早朝。「親に連絡してほしくない」と話し、疲れた様子が見られた。
先月18日には弁護士に、弁護団が差し入れた「被疑者ノート」を示し、取調官から「今のままだと社会に出られない」「黙っているなら親が死刑になるべきだ」と言われた、と訴えた。
弁護団の一人は「(市橋容疑者には)家族に迷惑をかけているという思いがある」と話していたが、再逮捕された2日には、会見などは開かれなかった。
絶食を続けていた市橋容疑者だが、拘置先が千葉刑務所の拘置施設に移った先月24日以降は、弁護団が差し入れたあんパンを食べ、食事も毎食ほぼ完食しているという。