今秋にも予想される新型の豚インフルエンザ流行の「第2波」に備え、厚生労働省は19日、医療対策や検疫態勢を見直す運用指針の改定を正式に発表した。全国的、大規模な流行を見越して、原則として患者を入院させず、重症者向けに病床を確保することを都道府県に求めている。
舛添厚労相は閣議後会見で「秋冬に向けていつ全国的かつ大規模な患者増加があってもおかしくない。警戒を怠ることなく、冷静に対応して欲しい」と呼びかけた。
また舛添氏は、各ワクチンメーカーによる季節性インフル用ワクチン製造を7月中旬に打ち切り、その後、新型インフル用ワクチン製造を始める考えを示した。厚労省によると、7月中旬までに季節性インフル用のワクチンは例年の8割に相当する約4千万人分を確保できる見通し。
改定された運用指針は、重症化しやすい病気をかかえた患者が新型インフルを発病した直後からタミフルなどの抗ウイルス薬を投与したり、優先的に遺伝子検査をして速やかに入院治療したりすることを挙げた。
発熱など感染が疑われる症状がある人を「発熱外来」で最初に診る態勢をやめ、原則的にすべての病院・診療所で外来患者を診察する。発熱患者と他の患者が接触しないよう、待合スペースを分け、診察時間をずらすなどの工夫を求めている。都道府県の判断で発熱外来を残すことも可能にした。
感染の疑いのある人全員の遺伝子検査もやめ、原則、全国500カ所の指定医療機関を受診した患者に限る。患者の全数把握より、集団発生とウイルスの病原性の変異に備えることに重点を置く。そのために、全国の保健所に対して、集団発生につながる出席停止や臨時休業の状況をより迅速に把握するよう求める。
全国を、患者が少なく感染拡大防止に努める地域と、患者が増えていて重症化防止に重点を置く地域に分けて指針を運用してきたが、この区分もやめる。運用指針は政府の対処方針の具体策を定めたもの。世界保健機関(WHO)が11日に新型インフルの警戒レベルを最高度のフェーズ6に上げたため厚労省が改めた。(野瀬輝彦)