【ワシントン=勝田敏彦】8日発行の英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)は、抗インフルエンザウイルス薬タミフルは、軽症の人が肺炎など合併症を起こさないようにする効果に疑問があるとする国際チームの論文を掲載した。
論文は、世界の優れた治験結果を選んで再検証する「コクラン共同計画」の一環。同計画は2006年にタミフルは合併症を防ぐのに有効との報告を出しているが、報告の根拠に使われた臨床試験(治験)を再検討したところ、一部に疑問のある内容が含まれていたという。これらの治験は、製造元のスイス・ロシュの助成で行われていた。
それらの治験結果を除外して計算し直すと、タミフルは、症状が1日短くなる程度の有効性はあったが、軽症の人の合併症予防効果を示す十分な証拠はなかった。論文は、「06年の報告は信頼できない可能性がある」としている。ただ、すでに合併症を起こし、入院が必要なほどの重症患者には有効だった。
合併症を予防する効果は、各国がタミフルを使用・備蓄する大きな根拠となっている。日本はタミフルの使用量が多い国の一つとして知られ、備蓄も進めている。
スイス・ロシュは「除外された治験で呼吸器感染を減らす効果は示されている」などと反論している。