2011年7月14日22時33分
九州電力は14日、玄海原発(佐賀県)の運転再開に理解を求めるテレビ番組での、「やらせメール」問題の調査結果を発表した。前副社長らの「賛成意見を増やしたい」という意向を受けて、組織的に世論操作が行われていた。佐賀支社では賛成意見の「例文」も取引会社に配り、番組に送るよう要請していた。
真部利応(まなべ・としお)社長は福岡市の本店であった記者会見で「番組の信頼を大きく損ない、深刻に受け止めている。責任は重大だと思っている」と話した。進退については「まず再発防止と信頼回復に取り組む。目の前の課題を放り投げることはできない」として当面続投するが、追加調査や再発防止にめどが付いた段階で辞任する見通しだ。
国主催の6月26日の番組に賛成意見を送るよう呼びかけられたのは、社内やグループ会社などの計約2900人に上り、うち141人が実際に送った。6月26日の番組に電子メールやファクスで寄せられた意見は賛成286件、反対163件で、やらせで賛否が逆転したとみられる。
九電の日名子(ひなご)泰通副社長が14日、経済産業省を訪れて報告書を提出。経産省は過去の同様の事例の追加調査や、外部識者による原因究明などを指示した。また東京、中部、中国など、過去5年に原発建設などの住民説明会があったほかの電力6社にも、やらせがなかったかどうか調べて29日までに報告するよう求めている。
報告では、原発部門トップだった前副社長とナンバー2だった前常務執行役員、佐賀支社長が放送前の6月21日に佐賀市内で会談。「運転再開への賛成意見を増やしたい」ということで一致した。3人は22日に、それぞれの部下に対応を命じた。その結果、原発部門や佐賀支社の幹部らを通じて、グループ社員や取引先関係者にやらせの指示が広がっていった。
調査結果に対し前副社長は14日、朝日新聞などの取材に「(やらせの)具体的な指示はしていない」と話している。
佐賀支社では取引先に協力を求める際「太陽光や風力発電などは代替電源となるのは無理で、当面は原発に頼らざるをえない」「安全対策は十分実施され、再開は問題ない」といった「例文」を渡していたことも新たにわかった。
佐賀支社は、佐賀県が原発の運転再開を議論するため8日に開いた「県民説明会」でも、グループ社員や取引先関係者らに参加を呼びかけた。6日にやらせ問題が発覚して九電は社員に出席しないよう促したが、取引先関係者ら63人が実際に出席。これは当日の参加者全体の2割に当たる。
過去のほかの住民説明会で九電が社員らを動員していたという指摘について、真部社長は「まったくなかったとは思わない」と述べた。