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地殻破壊3連鎖、計6分 専門家、余震拡大に警鐘

2011年3月13日23時25分

写真拡大M9.0への変更について会見する気象庁地震予知情報課の横田崇課長=13日、千代田区大手町1丁目

図拡大3連動した地震断層の模式図

図拡大1900年以降の主な巨大地震

図拡大地震の余震回数の比較

 東日本大震災を起こした地震の規模は、世界的にもまれなマグニチュード(M)9.0と判明した。三つの地殻破壊が連動して起きたことで大きな地震になったとみられる。今回の地震は、余震の発生数も群を抜いており、専門家はさらなる余震の広がりを警戒している。

 「3回の巨大地震が連続して起きていた。このような複雑な壊れ方は世界的にも極めてまれだ」

 気象庁で13日に開かれた記者会見で、地震予知情報課の横田崇課長はこう話した。

 気象庁は通常、地震直後に観測された地震の波形からマグニチュード(M)の暫定値を発表する。地震発生直後に発表されたMの速報値は7.9。その後、新たなデータが積み重なるたびに8.4、8.8と大きくなってきた。

 最終的にはM9.0に。米地質調査所(USGS)や気象庁のまとめでは、1952年のカムチャツカ地震などと並び世界で4番目の大きさだった。解析のもとになったのは、豪州やフィンランドなど世界各国で観測された地震波の記録。近くの地震計だと地震波が大きすぎて解析しにくいからだ。

 地震規模は、データや計算法により計算結果は異なる。USGSも、今回の地震規模をM8.9と発表したが、M9.1となる別の解析結果も発表している。エネルギーはマグニチュードが0.2大きくなると2倍、1違うと32倍になる。

 詳細に分析したところ、震源断層の破壊は、11日午後2時46分の地震発生時に続き、さらに2回の破壊があったと分かった。気象庁は当初、1回目の部分だけで規模を計算し、M8.8とした。この破壊は1分半ほど続いた。

 その1分後、やや南側の領域が壊れ始めた。この破壊も1分半ほど続いた。さらに、その南側も破壊が始まり、結局、地震発生から計6分間、三つの領域が連動して壊れ続けていた。2、3回目の破壊は、1回目の破壊と同程度の規模。このため、地震全体のエネルギーが巨大になった。

 気象庁は、破壊されたプレート(岩板)の大きさは南北500キロ、東西200キロとみる。国土地理院の観測した地殻変動では、最大の宮城県南三陸町の志津川で地面が東南東に4.4メートル移動、75センチ沈下した。

 「東北地方でこのような大規模な連動を我々は知らなかった。自然は一筋縄ではいかないことを実感した」。13日に開かれた政府の地震調査委員会後の会見で、阿部勝征委員長(東京大名誉教授)はこう語った。

 東北沖のプレート境界で起こる地震について同委員会は8領域を想定。複数の領域が連動して地震を起こす可能性も評価してきたが、今回ほど多数の領域の連動は想定してこなかった。13日の委員会では、8領域のうち宮城県沖から茨城県沖まで四つの領域が連動し、今回の地震を起こしたと評価。さらに、三陸沖や房総沖など三つの領域も連動した可能性を指摘した。

 余震の数や規模も最大規模だ。気象庁の観測では、M5以上の余震だけでも13日までに約170回。これまで最も多かった1994年の北海道東方沖地震(M8.2)の倍のペースだ。規模も大きく、大きな津波を起こしうるM7以上の地震も11日に3回発生している。

 M7以上の余震は、今後も16日までの3日間に70%、その後の3日間でも50%の確率で起こると、気象庁はみる。内陸や沿岸部で起こると、場所によっては震度6強になる。沖合で発生した場合でも震度5強になる可能性があり、地盤が悪いと揺れはさらに大きくなる。3メートル以上の大津波が再び発生し、湾の内側などでは10メートル以上になる可能性もあるという。

 余震は発生当初、本震を起こした震源域の内側で起こっていた。ただ、翌日以降、周囲にひろがる傾向があり、千葉沖でもM5の余震があった。

 筑波大の八木勇治准教授(固体地球物理学)は「余震が震源域の外に広がるのが、とても早く、驚きだ」と話す。

 余震は、本震でできたひずみを解消しようとして起こる。大規模にプレートが破壊され、周辺にもひずみがたまっているとみられる。

 東京大地震研究所の纐纈一起教授は「M9.0という本震の規模を考えれば、これまで国内で起きた大規模地震とは違い、余震は長期にわたって続く。範囲も房総沖まで延びる可能性がある」と話す。

 ひずみは、周辺で新たな大地震を誘発することがある。2003年の十勝沖地震(M8.0)の約1年後、隣接するプレート境界の釧路沖で地震(M7.1)が起こった。また、海外では元の地震の震源域とは別のプレート境界で、地震を誘発したとみられる例があるという。

 予想されている東海地震や東南海地震を誘発する可能性はないのか。

 大竹政和・前地震予知連会長は「影響があったとしても格段に小さい」と話す。今回の震源になったのは、三陸沖の太平洋プレート。東海、東南海、南海地震を起こすフィリピン海プレートとは別物だからだ。

 気象庁も同様に否定的だ。東海沖に設置してある高感度のひずみ計は、今回の地震をこれまでの一般的な地震や海外の大地震と同じように検知していた。今回の地震後も特別な変化は見られず、前兆にあたる「滑り」は観測されていない。

 梅田康弘・京都大名誉教授(地震学)も「今回の地震が直接の引き金になって、東海・東南海・南海地震が引き起こされると考える科学的根拠はない」と話す。ただ、「もともと発生する確率が高いと懸念されている地震なので、警戒が必要であることにかわりはない」と指摘する。

 一方、首都直下地震につながる可能性について、大竹さんは、事前予測は極めて難しいと断ったうえで、「可能性は排除できないと思う。内陸でも相当大きな地殻変動が起きているはずで、本州の北半分は全部影響範囲と考えてよい」と指摘する。

 鷺谷威・名古屋大教授(地震学)は「地震は地下のひずみが蓄積されて起こる。周辺領域の大地震の影響を受けたとしても、大地震を起こすだけのひずみがたまっていなければ発生しないだろう」と話す。フィリピン海プレートの境界で起こる地震には1923年の関東大地震もあるが、「発生から88年しか経過しておらず、地震を起こす十分なエネルギーはためていないと考えられる」と話す。

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