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「安全神話」の果て 福島第一原発事故

2011年3月16日

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 「避難は原発から20キロ圏内」。福島第一原発事故による住民避難は、日本の原子力防災指針の想定を簡単に超えてしまった。想定は、原発事故でも避難を含む重点対策をとる範囲は8〜10キロまでというものだ。日本では長い間、「原発の大事故は起きない」と聞かされてきた。今回の原発事故はこれが神話だったことを示した。

 原発の近くに住む人の中には、地震の被災で避難所にいき、原発事故でさらに遠くへ移動させられ、屋内退避を強いられている人たちがいる。「いつまで続くのか」という不安といらだちの中にいる。

 日本の原子力草創期、原発をつくる側が「原発の大事故は絶対に起きない」という表現をしばしば使った。これは科学の言葉ではなく、地元を説得するための方便のようなものだったが、原子力行政の中にも反映された。

 1979年の米スリーマイル島原発事故で炉心溶融が起きた後も、格納容器に過酷事故対策を追加することに、日本では当初、抵抗があった。

 チェルノブイリ原発事故では半径30キロ圏内の住民が避難した。

 しかし、住民の避難訓練には「日本ではそんな事故は起きないのになぜ訓練が必要なのか」という議論が起きた。当初は「住民」が実際に参加するのではなく「模擬住民」の役割をつくって住民参加の形をとらざるを得なかった。それほど抵抗が強かった。

 原子力災害の防災指針は今も、避難も含む重点対策は「8〜10キロまで」の範囲だ。原発の高さ100メートルほどの排気塔から放射能が「24時間」放出されるという仮定だ。その事故想定でさえ実際には起こりえない規模としている。

 チェルノブイリ事故の経験は「日本の原子炉とは安全設計思想が異なるので同様の事態は考えがたい」として考慮されなかった。

 今回の事故の広がりは今後の展開にかかっているが、指針が想定した範囲は超えた。これまでの考えは甘かった。

 東京電力は津波に耐える設計について「地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、安全性を確認しています」としている。そうした検討をしたはずだが、現実は全く違った。

 「大事故は起きない」という言葉が、これまで事故の怖さへの想像力を失わせていたのではないか。専門家も多くの人も、日本が技術先進国であることと一緒にして、知らず知らずのうちに、その言葉にとらわれていたと感じる。(編集委員・竹内敬二)

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