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燃料の「崩壊熱」止まらず 原発、核分裂は制御

2011年4月4日11時23分

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図:原子力発電の仕組み(沸騰水型軽水炉の場合)拡大原子力発電の仕組み(沸騰水型軽水炉の場合)

 止まっているはずの原子炉と、使用済みの燃料棒が次々と熱を発し、対応に苦慮する日々が続いている。様々な放射性物質の放出も止まらない。なぜこうなってしまったのか。原子力発電所と、エネルギーを生み出す核分裂反応の仕組みにさかのぼっておさらいした。

■「臨界」とは

 原子力発電は、核燃料から出る熱で水を沸かして蒸気をつくり、蒸気で風車のようなタービンを回して発電機を動かす。

 蒸気で発電するのは火力発電と同じだが、核燃料を使うのか、石炭や天然ガス、石油を使うのかが違っている。

 普通の原子力発電は、核燃料に3%ほど含まれるウラン235の原子が核分裂を起こすときに出る大きな熱を使っている。1グラムのウラン235が出すエネルギーは、石炭なら3トン分、石油なら2千リットル分に匹敵する膨大なものだ。

 核分裂は、原子の中心にある原子核が分裂すること。原子核は、中性子と陽子という2種類の粒子からできている。

 ウラン235に、外からきた中性子がぶつかると、小さな原子核に分かれて新しい中性子と熱エネルギーを出す。飛び出した中性子は、さらに近くのウラン235の原子核にぶつかり、核分裂が次々と起きて、大きな熱エネルギーを生み出す。

 核分裂を繰り返し、熱を出し続ける状態を「臨界」といい、発電をしているときはこの状態が保たれている。核燃料は細長い棒状の形。核分裂の状態は、中性子を吸収しやすい材料で作られた制御棒を出し入れして調整している。

■炉で湯を沸かし、発電

 核分裂させて湯をわかす巨大な装置が原子炉。東京電力などが採用する沸騰水型の原子炉では、蒸気を管を通して隣にある建物に運びタービンを回して発電している。発電後の蒸気は、復水器という装置で海水を使って冷やして水に戻され、再び原子炉に運ばれ、この循環を繰り返している。

 発電に使う水は、蒸気を作るためだけではなく、原子炉のなかで中性子の速度を落とし、反応を効率よく進める役割も果たしている。核分裂で出る中性子は飛ぶ速度が速すぎて、そのままでは、うまく次の核分裂を起こせないからだ。

 「水がなければ中性子が減速されず、連続的な核分裂反応が起こることはない」と京都大原子炉実験所の宇根崎博信教授は話す。つまり、原子炉が水のない空だき状態なら連続した核分裂はまず起きないことになる。

 核燃料から出る熱は、核分裂によるものだけではない。

 ウラン235が核分裂すると、いろんな原子核にわかれ、100種ほどの核分裂生成物と呼ばれる物質ができる。ほとんどが不安定な放射性物質。安定な状態になるまで、ベータ線などの放射線を出しながら「崩壊」を繰り返し、熱を出し続ける。その熱は核分裂を止めた直後で臨界状態のときの数%。核分裂生成物を多く含む使用済み核燃料は、平常時でもプールに入れて数年間、水で冷やし続ける必要がある。

 崩壊する速度は生成物によって違い、量が半分になるまでの時間を示す「半減期」は、1秒以下から1千万年以上までさまざま。原発事故ではヨウ素131(半減期8日)とセシウム137(30年)の検出が目立つ。

 東京工業大の鈴木達也准教授(放射化学)は「半減期が短いとすぐ崩壊してなくなり、長すぎると検出しにくい。ヨウ素131とセシウム137は検出されやすい半減期で量も多い」と説明。この2種は人体に取り込まれやすく、健康被害も心配される。

■冷却水、循環せず

 原発では、放射性物質をしっかり閉じこめる必要がある。核燃料を覆う管、厚さ16センチほどある鋼鉄製の圧力容器、厚さ3センチほどの鋼鉄製の格納容器、約2メートルの厚さのコンクリート壁などが、多重の壁とされてきた。

 福島第一原発では、制御棒を使って原子炉を緊急停止させ、核分裂を繰り返す臨界状態は止められた。だが、核燃料の中では核分裂生成物の崩壊が続いて熱を出し続けている。これを止める手だてはなく、冷やす水を循環させなければならない。

 しかし、そのためのポンプなどが津波で動かなくなった。原子炉や使用済み燃料プールにある核燃料を冷やすことができず、放射性物質の放出が続く重大な局面が続いている。(本多昭彦、吉田晋、米山正寛)

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