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ネットでお手軽貢献の可能性 節電ゲームで連帯も

2011年4月5日11時17分

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写真:東日本大震災の被災地では、無料でインターネットを利用できるパソコンの置かれた避難施設も見られた=3月23日、仙台市拡大東日本大震災の被災地では、無料でインターネットを利用できるパソコンの置かれた避難施設も見られた=3月23日、仙台市

写真:濱野智史さん拡大濱野智史さん

 最近、ネット上で「スラックティビズム」という言葉がちらほらと聞かれるようになった。

 英語で“怠け者”を意味する「スラッカー」に「アクティビズム」を掛け合わせた造語で、要は「たいした労力をかけずにできる、お気軽な社会運動」のことを指している。

 残念ながら、スラックティビズムという言葉はポジティブな意味合いで使われているわけではない。先の東日本大震災以降、この言葉はネット上の「お気軽な慈善活動」を批判する文脈で聞かれるようになった。

 例えばその一つに、ツイッター上で有名になった「ヤシマ作戦」というものがある。有名なアニメ作品「新世紀エヴァンゲリオン」に由来するもので、「みんなで節電しよう」と呼びかける運動だ。

 それが広がった背景には、ツイッター独自の仕組みがある。「リツイート(RT)」と呼ばれる独自の機能を使えば、わずかワンクリックの操作で善意の呼びかけに賛同し、共感の声を大きく広げていくことができるからだ。

 しかし、その簡便さこそがスラックティビズム批判の標的になる。クリック一つで気軽に参加できる社会運動。それは結局のところ、「自分も慈善行為に参加した」という心理的安心を得るための、ある種の〈自己満足〉に過ぎないのではないか。そう批判する声が上がっているのだ。

 筆者は、決してこうした批判の声にうなずくわけではない。むしろ「お気楽に参加できる社会運動」としてのスラックティビズムにこそ、新たな可能性が見いだせるのではないかと考えている。

 その一例としていま筆者が注目しているのが、節電ゲームの「#denkimeter」である。ゲーム研究者の井上明人氏が公開したもので、いまツイッター上でひそかに広まりつつある。

 ルールは簡単。プレーヤーは、自宅の電気メーターの数値を周期的にツイッターで報告する。効果的な節電に成功すればするほど「戦闘力」がアップしていき、他のプレーヤーと日夜節電の成果を競い合うというのがこのゲームの目的だ。

 このゲームは、一見すると「お気軽な社会運動」としてのスラックティビズムそのものである。節電をゲームにするなんて、不謹慎だと思う人もいるかもしれない。

 しかし、この試みが秀逸なのは、個々のプレーヤーはお気軽にゲームを楽しんでいるだけにもかかわらず、それが集合的に積もり積もることで、節電効率の向上に繋(つな)がっていく点にある。個々人が節電に〈協力〉するだけではなく、その効率を〈競争〉しあうことで、全体から見ればよりプラスの相乗効果が生み出されるのだ。

 筆者はここに、ネット時代の新たな「善意の連帯」の可能性を感じている。「ネットゲーム的社会運動」とでもいうべきこの仕組みは、決して人々に善意を呼びかけたり、押し付けたりすることもない。ただ個々人がゲームに参加することで、人々の善意が効果的に集約されていき、全体として社会貢献に繋がっていく。

 そしてこの仕組みは、節電だけではなく、もっと他の分野にも応用することができるはずだ。例えば「どれだけモノを買いだめせずに節約できるか」を競いあうゲームをたくみに設計できれば、「買いだめ問題」の抑制が実現できる、というように。いま私たちは、こうした全く新しい社会的連帯の可能性を手にしつつあるのである。(濱野智史・批評家)

 はまの・さとし 1980年生まれ。専門は情報社会論。日本技芸リサーチャー。ネットによる社会変容を分析した著書『アーキテクチャの生態系』で注目された。

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