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手動でポンプ給油「おれが復興」 南三陸を支えるGS

2011年4月5日22時4分

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写真:給油作業をする三浦文一さん。この日、母の遺体と対面した=3月20日、宮城県南三陸町、福岡亜純撮影拡大給油作業をする三浦文一さん。この日、母の遺体と対面した=3月20日、宮城県南三陸町、福岡亜純撮影

写真:全壊したスタンドで作業する三浦文一さん。津波は写真奥の伊里前湾側からやってきた。土ぼこりを舞い上げて漁船が流れてきたという=南三陸町、岩田写す拡大全壊したスタンドで作業する三浦文一さん。津波は写真奥の伊里前湾側からやってきた。土ぼこりを舞い上げて漁船が流れてきたという=南三陸町、岩田写す

写真:3月20日、一般車両への給油を再開した三浦文一さん(左端)のガソリンスタンド=宮城県南三陸町、福岡亜純撮影拡大3月20日、一般車両への給油を再開した三浦文一さん(左端)のガソリンスタンド=宮城県南三陸町、福岡亜純撮影

写真:手作業でタイヤ交換をする三浦文一さん=2日午後1時6分、南三陸町歌津、岩田写す拡大手作業でタイヤ交換をする三浦文一さん=2日午後1時6分、南三陸町歌津、岩田写す

写真:手動ポンプのハンドルを回して給油する店員たち=宮城県南三陸町、岩田写す拡大手動ポンプのハンドルを回して給油する店員たち=宮城県南三陸町、岩田写す

 津波で壊滅した宮城県南三陸町で、被災の2日後から人々に燃料を供給し続けているガソリンスタンドがある。

 伊里前川の河口から約500メートルの歌津地区。一面に広がるがれきの中、骨組みだけが残ったスタンドで、数人の若者が給油用手動ポンプのハンドルをぐるぐる回していた。「多い時で1日300台。腕がもうパンパンです」。店員の阿部宏幸さん(25)が笑う。

 「あいつら、家なくして避難所暮らしなんだよ。それでも手伝うって言ってくれてね」と話す経営者の三浦文一(ぶんいち)さん(57)の自宅も、スタンド裏に土台だけ残し跡形もない。数キロ離れた実家では両親が津波にさらわれた。最近、ようやく母の遺体が見つかった。

 両親の安否もわからなかった3月13日に店を開け、ガソリンや灯油を少しずつ無料で分けてきた。代金を受け取るようになったのは1週間たってからだ。「おやじの代から地域の人にお世話になってきたから」

 漁師だった父が45年前に始めた店を、子どもの頃から手伝ってきた。灯油を配達に行くと、「メシ食ってけ」と、目の前の茶わん飯でおにぎりをつくってくれた。漁から帰った客が魚やホタテを持ってきてくれた。「絆が強い。ここはそんな土地なんです」

 燃料が尽きかけたころ、国から緊急車両用の燃料を預かった。だが、地元の人へは給油できない。やがて悲痛な声が聞こえてきた。「母を焼く火葬場に行くガソリンがない」「父を透析に連れて行けない」。みんな顔見知りの客ばかり。燃料の卸会社に「なんとかしてくれ」と訴えた。

 3月19日の夜、青森から17時間かけて走ってきたタンクローリーが、がれきだらけの真っ暗な道を、赤色灯を回す消防団の車に先導されて到着した時、おもわず手を合わせて拝んだ。

 停電中でも給油できる手動ポンプは、阪神大震災で活躍したという記事を思い出して三浦さんが被災直後に東京のメーカーから取り寄せた。道路事情の悪い中、「ぜひ役立ててください」と、福島にあった在庫をすぐに届けてくれた。他の業者らも駆けつけ、海水につかったタンクを整備したり、壊れた通気管を修理してくれたりした。

 それでも、街からは続々と人が去っていく。4月1日、なじみの客が親類を頼って青森に行くから、と別れを告げに来た。翌2日には、8年働いてくれた店員の阿部さんが3日から家族で疎開すると告げた。「そうか、落ち着いたら連絡よこせよ」。三浦さんはそれだけ言うと、黙々とタイヤ交換の作業を始めた。

 ホイールからタイヤをはずし、木づちをふるってタイヤを押し込む。空気を入れて作業を終えると、「なせば成る」と大声をあげた。「男はな、泣いてもいい。でも、一度顔をあげたら、後ろ向いちゃいけねんだ。この街はおれが復興する」(岩田誠司)

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