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福島第一原発の安全不備 非常設備は改修せず

2011年4月6日11時41分

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 東京電力の福島第一原発が津波に襲われた後、被害が拡大した理由に、非常用ディーゼル発電機などの設置場所など安全設計上の問題があった疑いが浮上した。1970年代から第一原発の運転を続ける中で、東電は改良工事など対策を講じることはできなかったのか。

■「大工事になり金かかる」関係者証言

 「福島第一原発は、ほかの原発と比べても極端に津波に弱い」。原発の安全確保の基本方針を決める原子力安全委員の一人は、事故から復旧の見通しが立たない中で、こう指摘した。

 福島第一原発は、国内の商業用原発としては最も古い部類に入り、60年代から70年代にかけて建設された。その後、耐震性などを強化するため、70〜80年代にかけて大規模な改良工事が行われた。

 この工事にかかわった元東電社員の原子力技術者によると、各建屋につながれている電気ケーブルやパイプなどをコンクリートで覆い、岩盤と接するように工夫した工事などが繰り返されたという。ただ、今回、津波の被害を拡大させた疑いがある、非常用ディーゼル発電機の設置場所や、海水ポンプがほぼむき出しの状態で置かれていたことを見直すことについては、この技術者は「検討課題にはなっていなかった」。

 この理由について、原子力技術者は「想定した津波の高さで原子炉建屋は安全な位置にあると判断していることがまずあるが、発電機の位置などを変えようとしても、原子炉建屋の中に収納できるようなスペースはなく、設計の大幅な変更につながる。その発想は当時なかった」。また、東電の中堅幹部は、「もし、改修に踏み切ったとしたら、大規模な工事になり、多額のカネがかかる。当時は設計通りに作ることが至上命題だった」と話した。

 この背景には、60〜70年代の建設当時、原発先進国・米国の技術を移入し、日本側はそれを学ぶ過程にあったことがある。東電元幹部はこう説明する。「福島第一はゼネラル・エレクトリック(GE)の設計を東芝と日立製作所が試行錯誤しながら学ぶ練習コースみたいなものだった」

 福島第一原発に六つある原子炉のうち、1〜5号機はGEが開発をした、「マーク1」と呼ばれるタイプの沸騰水型炉。関係者によると、福島第一の非常用発電機の場所や、ポンプの構造は、GEの基本設計の通りだという。一方、6号機からは、原子炉建屋により余裕のある「マーク2」が採用され、70年代中ごろから90年代にかけて建設された福島第二と、柏崎刈羽両原発では「マーク2」の改良炉が主になっている。非常用発電機の位置やポンプを覆う建屋の建設も、東芝や日立製作所が経験を積み、改良していった点だ。

 だが、後発の原発に盛り込まれた安全設計の進展が、福島第一に活用されることはなかった。原子力技術者は「福島第二などの建設からも何年もたっているわけで、なぜ、福島第一に安全思想をリターンしなかったのかという点は、この大震災があったからこそ悔やまれる。東電は今後、厳しく検証を迫られることになるだろう」と指摘した。

■「後から直すと、当初の対策が甘かったと指摘される」

 一方、「日本では大きな原発事故はありえない」という、「安全神話」に頼る意識も影響した。

 東日本大震災が起きる前から、想定以上の津波が起きる危険性は指摘されていた。「防波堤をもっと高くできたはずだ」という声は東電社内でも起きている。ただ、東電の中堅幹部がかつての上司に「なぜ改良しなかったのか」と聞いたところ、「後から高くすると、当初の津波対策は甘かったという指摘を受ける。それを避けたかった」ということを言われたという。この中堅幹部は「非常用発電機を原子炉建屋に移すことについても、同じ考えがあったと思う」と話す。

 安全確保を目的とした、国の規制も改良を妨げたという指摘もある。原子力安全委員の一人は「日本は非常用発電機一つの位置を変えるにも、複雑な許認可が伴う。いまさら言っても遅いが、そのあたりが硬直化している」と話した。(板橋洋佳、市田隆、小島寛明)

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