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地震・津波・原発事故に風評被害…「四重苦だ」

2011年4月16日12時17分

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写真:茨城県の久慈町漁協が底引き網漁を再開。ほぼ1カ月ぶりに水揚げされた魚が漁港に並んだ=15日、同県日立市、成田認撮影拡大茨城県の久慈町漁協が底引き網漁を再開。ほぼ1カ月ぶりに水揚げされた魚が漁港に並んだ=15日、同県日立市、成田認撮影

 福島第一原発の事故で風評被害が広がっている。被災地周辺の野菜や牛乳が敬遠され、がれきの受け入れで苦情が殺到した。子どもへの差別的な言動も報告された。放射能への誤解や過剰な警戒が原因だ。政府や行政は冷静な対応を呼びかける。

 「地震、津波、原発事故に加えて風評被害で四重苦だ。本当に恐ろしい」

 15日、東京・霞が関の農林水産省で、福島県南相馬市の関係者が、鹿野道彦農水相に口々に訴えた。

 福島県は全域で葉物野菜、大部分で原乳の出荷が禁止されている。だが、対象でない特産のイチゴも売れず、値段は通常の半分。同市は自主的に、全域で今季の米作りも見合わせた。

 官邸ではこの日、JA福島中央会から「風評被害の一掃を」との陳情を受けた菅直人首相らが、報道陣の前で県産のイチゴやキュウリをほおばってみせた。

 農水省によると、福島県産では牛肉が返品されたり、製材が取引をキャンセルされたりするケースも報告されている。

 福島以外でも、葉物野菜を中心に風評被害が広がっている。

 東京都中央卸売市場では3月下旬、出荷停止の対象でない茨城県産レタスの価格が前年同期の2〜4割程度に暴落した。キャベツは愛知、神奈川が主産地にもかかわらず平年の69%(14日)で、産地を問わず低迷している。

 水産物では、茨城県沖のイカナゴ(コウナゴ)から基準を超えた放射性物質が検出された4月上旬以降、千葉県産も価格が下落したままだ。

 すべての漁が止まっていた茨城では15日、2漁港の10隻ほどが漁を再開した。日立市の漁師の小泉昭彦さん(67)は「このままでは収入はゼロ。生活するには、安く買いたたかれても、漁に出るしかない」と話す。水揚げしたヤリイカやアンコウなどの値は普段の7割ほど。アジは普段なら1キロ150〜200円だが、約10円だった。

 北茨城市の平潟漁港でも、6〜7割の値しかつかなかった。16日には東京・築地市場などで競りにかけられる。平潟漁協の鈴木一久参与は「どのくらいの値がつくのか、祈るような気持ちだ」。

 海外では、中国が福島周辺の12都県の食品・飼料の輸入を停止。ベトナムなどは全国のすべての食品を止めている。松本剛明外相は15日の記者会見で、海外メディアで間違った情報が流れないよう「しっかり対応する」と述べた。

 そんな中、「回復」の兆しもある。出荷停止が解除され、福島・会津産の原乳を使った牛乳が16日から首都圏の店頭に再び並ぶ。会津中央乳業の二瓶孝也社長は「再建の目鼻がついてきた。このまま順調に流通してほしい」。

 だが、風評被害は食品にとどまらない。

 川崎市では、阿部孝夫市長が被災地のがれきを受け入れると表明したところ、「放射能のごみを燃やしたら危険」などの苦情が市に殺到した。受け入れ方針が報じられた8日以降、電話やメール、封書は4千件近くに及ぶ。

 大半は「放射能を帯びた廃棄物が持ち込まれる」という誤解に基づくもの。市はホームページにQ&Aを掲載し「安全が確認されるまで受け入れることはない」などと説明。最近は「電力を供給されている立場で(がれき受け入れに)文句を言うのはおかしい」「頑張って」といった電話も増えてきたという。

 千葉県船橋市では、「福島から来た児童が地元の子どもたちから避けられた」とする報道もあり、市などが対応に追われた。

 発端は、避難者の支援活動をしている市議が3月下旬、福島から避難している70代女性と40代男性の親子から聞いた話。「船橋に避難した親類の子が市内の公園で遊んでいる時、福島から来たと言ったら避けられた。子どもたちは船橋に転校するのをやめた」といった内容だった。

 事実関係は不明だが、市教委は念のため、3月28日に全市立小中学校に、「(避難してきた子らに)思いやりを持って接し、温かく迎える」「不安な気持ちを考え、言動に注意する」などと注意を求めた。

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